横浜/そごう美術館《手塚雄二展 雲は龍に従う》を鑑賞。(2024年/秋)

過去の展覧会

 過去の展覧会(ダイジェスト版)になります。

2024年10月19日から11月17日まで《寛永寺創建四百周年 根本中堂天井絵奉納記念 手塚雄二展》が開催されていました。印象に残った展示作品をご紹介しましょう。尚、茶色の文字で表記した箇所は、本展チラシ、鑑賞ガイド、パネル解説より(一部)引用しました。

東叡山寛永寺根本中堂とうえいざんかんえいじこんぽんちゅうどう奉納天井絵《叡嶽双龍えいがくそうりゅう2023年 板絵

東叡山寛永寺根本中堂奉納天井絵《叡嶽双龍》2023年 板絵

床に平置きされた天井絵がいきなり視界に飛び込んできました。物見台から作品の全貌を見下ろすこともできました。

本展では、2020年から制作中の6×12メートルという長大な寛永寺根本中堂の天井絵を、2025年の奉納に先駆け披露します。この天井画は数百年の時を経た天井板に直接描かれるもので、旧材に描き出される二頭の龍は手塚が初めて挑むモティーフで、コロナ禍、アトリエに籠って描いた夥しい数のスケッチの中から紡ぎ出された独自の図像です。

東叡山寛永寺根本中堂奉納天井絵《叡嶽双龍》部分

受付で戴いた鑑賞ガイド『天井絵 鑑賞のすすめ』によると板材にあわせて、中国、明時代の墨「明墨みんぼく」(油煙墨、艷やかな光沢あり)を選んだ(主旨)とのこと。

東叡山寛永寺根本中堂奉納天井絵《叡嶽双龍》部分

稲光や炎には金箔を用いて強い輝きを表現したとのこと。

東叡山寛永寺根本中堂奉納天井絵《叡嶽双龍》部分

グレー部(注:画像の発色が実物とはやや異なります。)にプラチナ泥、金色に金泥をふんだんに使っているとのこと。

第1章 四季の庭

静刻せいこく1986年 額装

《静刻》1986年 額装

池のほとりでしょうか。画面上部には、木々の根元しか描かれていません。対して、画面の2/3を占める水面に、木々の全体像が映る風情ある作品。鮮やかな緑色を映した水面の美しさに惹かれました。

海霧うみぎり2003年 六曲一隻屏風 

《海霧》2003年 六曲一隻屏風 第88回再興院展出品作

一見地味な作品ですが、近くで拝見すると、気品ある色遣いに忽ち魅了されました。屏風の下部には、静かに打ち寄せる波頭が白く表現されています。視線を徐々に上へ移すと、白んだようになっている中央で、波を描いた線が消失。おそらく水平線はこの辺り。画面上部は闇に包まれた空…と解釈しました。黒縁が作品を引き立てます。

《海霧》部分

第2章 荘厳なる景色

《朝霧》2008年 六曲一隻屏風 

《朝霧》2008年 六曲一隻 第93回再興院展出品作

静謐な森を描いた作品彩色された作品に引けを取らず、独特の世界観を形成していました

第3章 光とともに

例えば木々の枝葉の隙間から漏れて地面をまだら模様に照らし出す陽だまり、けぶるように空間を充満する光、さらさらと降り注ぐ陽光、あるいは夜の静寂にひっそりと灯る仄かな光など、画家はその鋭敏な感覚によって切り取った多種多様な光を自在に描き分けています。

《こもれびの坂》1996年 額装

《こもれびの坂》1996年 第51回春の院展出品作

タイトルを見ないことには、“木漏れ日”とは理解し難いほど、道も崖も、光に満ち満ちています。上部に施されている深緑色と、この金色の取り合わせが何とも美しい。

《月の腕輪》1999年 額装

《月の腕輪》1999年 額装

拝見した刹那、平山郁夫画伯の作品を、次いで高山辰雄画伯の作品を想起しました。夜空の星と呼応するかのように、三日月の形に腕輪が輝いています。金泥で表現された星・腕輪が闇の中に浮かび上がって神秘的。横顔を見せる女性の足が浸かった水面には、僅かな揺れが認められます。

《月の腕輪》部分

《うすくれなゐ》2021年 額装

《うすくれなゐ》2021年 第76回春の院展出品作

画面中央に三日月。その三日月を囲むように枝葉が伸びる構図が素敵。旧仮名遣いを使用したタイトルも趣があります。(注:光る点は照明の映り込みです。)

波洸はこう1996年 四曲一隻屏風 

《波洸》1996年 四曲一隻 第81回再興院展出品作

鮮やかな緑色を駆使して波打ち際を表現した斬新な作品。視線を縦に移動すると、金色から緑色、緑色から紫色に変化する色遣いが幻想的でした。寄せる波は、静かなる動といった趣。

《波洸》部分
《波洸》部分
《波洸》部分

11月3日放送『日曜美術館 ア―トシーン』において、本作も紹介されました。青森県・奥入瀬川の渓流を主題にしたとのこと。岩に堰き止められた水がまるで波のように泡立ちます。と解説がありました。

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感想(9件)

第4章 清けし、幽けし

(前略) 単なる実景ではなく、内省的な寓意を孕んだ独自の風景を描いてきました。画家の内なる「希望」が託された風景は、どこかさやけし(明るく清々しい)空気に包まれています。一方で画家は「陰と陽なら、陰の方に。より“かそけきもの”に心惹かれる」というように、(中略) 霧に包まれた幽玄な情景など、日本独自の感性と美意識への共感を伝えています。(中略) まるで振り子のように相反するテーマや価値観、そして表現を反復しながら展開していきました。

《きらめきの森》2005年 六曲一隻

《きらめきの森》2005年 六曲一隻屏風

緑豊かな木立を描いた夢幻的な作品。余計なものを取り払って樹木・大地を表現すると、緑色×茶色の取り合わせになることを再認識しました。左右に視線を動かすと、樹木が延々と連なる森に誘われるような…。

《きらめきの森》部分
《きらめきの森》部分

《麗人》2023年 額装

《麗人》2023年 第78回春の院展出品作

紅色が美しい装飾的な作品。蝶のフォルム・位置取りも見事でした。

《麗人》部分

東叡山寛永寺根本中堂奉納天井絵《叡嶽双龍》小下図 2022年

東叡山寛永寺根本中堂奉納天井絵《叡嶽双龍》小下図 2022年

⇧と⇩を比較すると、なるほど…。

左は《阿龍》、右は《吽龍》

3色(白・黒・金)に限定されることで、龍の輪郭線がよりクリアに感じられました。

阿龍ありゅう2023年 掛軸

《阿龍》2023年 掛軸

吽龍うんりゅう2023年 掛軸

《吽龍》2023年 掛軸

以上、印象に残った作品をご紹介しました。

手塚雄二 公式ホームページ TEZUKA Yuji - Official Home Page
手塚雄二は日本美術院同人であり、東京芸術大学の日本画科教授です。手塚雄二の描く日本画は、花月草星を現代の日本の美に映す芸術として評価が高く、その作品の数々は圧倒的な存在感を放っております。

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