《ひとを描く》展との同時開催です。会期は11月2日から2025年2月9日まで。原則、日時指定予約制です。ウェブで購入するチケット料金は一般1,200円、学生無料。
5階展示室《ひとを描く》展を鑑賞した後、エスカレーターで4階に下りてきました。ホールの先は吹き抜けになっています。
マティスの作品を中心に、印象に残った展示作品をご紹介しましょう。
No.1 アルフレッド・シスレー《森へ行く女たち》1866年
前回の来館時は《サン・マメス六月の朝》を鑑賞。柔らかな日射し・豊かな緑が特徴的でした。本作は先ず、身を寄せるように歩く農婦たち(かな?)に視線が向かいます。二人連れ、労働する男の姿も。殺伐とした印象を拭えない所以は、黒黒とした屋根の連なり、厚い雲、弱々しい日射し。道の傍らの黒い帯は露出した土でしょうか。日常の穏やかな光景、と解釈する鑑賞者も多いと思いますが、この村にタイム・スリップしたら冬季うつになりそう…と思ってしまいました。
No.3 クロード・モネ《アルジャントゥイユの洪水》1872−73年
簡単には水が引きそうもない空模様。モネの作品には珍しく、荒涼とした風景が描かれています。垂直方向の木立と水平方向の水のせめぎ合いを拝見していると、やりきれないような…。
No.5 新収蔵作品 ジョルジュ・スーラ《平底舟》1883年
“スーラは1881年頃から、縦16センチ、横25センチほどの小さな板に油彩で構図や色彩の研究を行いました。(中略)手軽に持ち運ぶことができて、手で持って描くこともできたため、戸外での習作に適していました。この作品に描かれているのはパリ郊外を流れるセーヌ川。背景には家並みと工場の煙突が見えます。印象派の画家たちが好んで取りあげた「工業化されたパリ郊外の風景」という題材に、スーラも関心を持っていたことがわかります。”(キャプションより一部引用)
No.11 エドヴァルト・ムンク《病める少女》 1894年
ムンクの作品はごくたまに拝見しますが、この光景は深刻。帽子を被っているご婦人は見舞客でしょうか。表情を窺うことはできませんが、うなだれて少女の手を取る仕草は、少女の病状が芳しくないことを想像させます。ご婦人に話しかけているようにも見える少女の表情は穏やか。
No.22 パブロ・ピカソ《ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙》1913年
予め、絵の具に砂と接着剤を混ぜているのでしょうか。ゴツゴツした質感を表現するのに効果的ですね。佐伯祐三画伯の作品と通底するものを感じました。
No.28 アンリ・マティス《両腕をあげたオダリスク※》1921年
マティス作品の中で一番魅了された一枚。裸身を晒しながら、あっけらかんとしている女性の表情を拝見すると、大層なことではない、という心持ちになります。背景を彩る大胆な模様も、半裸のインパクトを減じる要素になっているように思います。
※オダリスク
“1921年頃よりマティスは、室内の諸要素と裸婦を組み合わせる上で最適な手法として、19世紀のフランス絵画に描かれたオダリスク(イスラム世界で君主のハレムに勤める女性)の主題に取り組むようになります。《両腕をあげたオダリスク》では、ターバンと腰巻きが、裸婦をオダリスクとして示しています。”(パネル解説より一部引用)
価格:4950円 |
⇩特設コーナーがあります。
足を踏み入れると、右側の壁面には⇩
切り紙絵
“日々の営みとなった切り紙絵の制作は、アトリエの壁を埋め尽くすまでになり、戦後には版画集『ジャズ』が刊行されるなど、1900年代半ば以降のマティスの創作の象徴のひとつとなっていきます。”(パネル解説より一部引用)
20作品のうち上から2列目の作品を、右から順に5つご紹介します。
正面奥には新収蔵作品が展示されています。
No.31 新収蔵作品 アンリ・マティス《踊り子とロカイユの肘かけ椅子、黒の背景》 1942年
“画面の左に、座面に果物とカップを載せた肘かけ椅子、右に、ルイ15世様式の椅子に腰かけた、顔の造作が省かれた人物が描かれています。(中略)画面が左右で均衡する構図を作り出したとみられます。この均衡は、まずふたつの椅子に共通する黄色の色面によって、そして、《青い胴着の女》にもみられたように、人体と肘かけ椅子との類似的なフォルムによって、複層的に作り出されています。”(パネル解説より一部引用)
左側の壁面には⇩
No.30 アンリ・マティス《青い胴着の女》1935年
特設コーナーを出て、その先へ。
No.58 和田英作《読書》1902年
「黒田清輝?」と思ったら違いました。和田英作画伯の作品は初見です。ネット検索したら、生誕150年の節目。まだまだ存じ上げない大家も多いです。
No.60 重要文化財 藤島武二《黒扇》1908−09年
瞬時に目を奪われました。キャプションに視線を移すと、藤島武二画伯の作。作品を拝見する機会は滅多にありません。ネット検索したら1867年生まれ。本作は41〜42歳時に制作されたのですね。同時代に活躍した著名な洋画家といえば、黒田清輝、藤田嗣治…。1900年代初め、世界に伍する洋画家がいらしたことを再認識しました。
No.66 安井曾太郎《薔薇》1932年
素敵な静物画です。黒い背景の本作を拝見すると、《佐伯祐三 自画像としての風景》(2023年、東京ステーションギャラリーにて開催)で鑑賞した《薔薇》を連想します。
No.77 新収蔵作品 ウィレム・デ・クーニング 《一月》1947−48年
No.79 リー・クラズナー《ムーンタイド》1961年
以上、印象に残った展示作品をご紹介しました。【石橋財団コレクション選】会期は2025年2月9日まで。
価格:8000円~ |