アーティゾン美術館《空間と作品》展で贅沢な時間を過ごしましょう❢【前編】(2024年/夏)

展覧会

7月27日より《空間と作品》展が開催されています。原則、日時指定予約制です。ウェブで購入するチケット料金は一般1,200円、学生0円。私は当日朝、都合の良い来館時間帯を予約しました。

いざ美術館へ。QRコードを翳して入場します。数多の展示作品の中から、特に印象に残った作品をご紹介します。多分に嗜好が反映していることをご了承ください。

このホールを通り抜けると展示室です。何と贅沢な空間でしょう。

円空 《仏像》

高さ70cm程の仏像2体が鎮座しています。うち1体は目・鼻・口が顔の真ん中に集まったユーモラスな顔立ちをしています。笑っているような、見て見ぬふりをしているような…。この世俗的なお顔をした仏様に向かって、当時の人々はどういったことを日々祈っていたのでしょうか。

円空(生没年1632ー1695) 仏像 江戸時代(17世紀)

現在、日本に伝わる円空仏は5,000体以上が数えられていますが、実際にはもっと多かったはずで、江戸時代の記録によれば12万体の仏像を彫ると発願したとも。(キャプションより一部引用)

カミーユ・ピサロ 《四季 冬〜秋》

次の展示室中央にはダイニング・テーブルが据えられ、壁にはピサロの絵4枚(展示順に冬、春、夏、秋)が掛けられています。キャプションによると、当時、ある銀行家(ギュスターヴ・アローザ)が、別荘のダイニングルームに飾る四季図をピサロに依頼したとのこと。そのダイニングルームをイメージした演出のようです。

カミーユ・ピサロ(生没年1830ー1903)《四季 夏》 1873年 油彩・カンヴァス 55.5cm×131.0cm

豊穣を予見させる夏の風景。横長の大画面が、広大な麦畑と果てしない空を効果的に表現しています。中央に描き込まれているのは収穫に携わる家族でしょうか。平和な日常の一コマに心が和みます。

パブロ・ピカソ《腕を組んですわるサルタンバンク》

キャプションによると、著名なピアニスト/ウラジーミル・ホロヴィッツ(生没年1903ー1989)がかつての持ち主。

居間にはスタンウェイ社のグランドピアノ2台が置いてあり、カードゲームに興じる客人たちの側で、演奏をすることもあったとか。そして、演奏の合間には、このピカソの絵の下にあるソファに寝そべり、客人たちと楽しく過ごしたようです。(キャプションより一部引用)

パブロ・ピカソ(生没年1881ー1973)《腕を組んですわるサルタンバンク》1923年 油彩・カンヴァス

縦130cmを超える大作。赤と紫の取り合わせに一瞬怯んでしまいました。顔も首も手も一様に白く、体温が感じられません。黒い輪郭線が青白い肌を一層際立たせています。サルタンバンク=大道芸人とのこと。奇抜な衣装を身につけている事に合点がいきました。彼の胸中に去来するのは虚無感でしょうか。左の瞼に紅を差した意図は何でしょう。よくよく見ると、同じ色が耳・首にも施されています。人を象ったような壁の描線、無造作に引かれた縦線も気になります。背景に重きをおいていないことは理解しているつもりですが、不可解です。と言いつつ、この作品のオーラの前にはひれ伏すしかありません。

円山応挙《竹に狗子くし波に鴨図襖》

通路奥の大空間に小上がりが設けられています。ガラス越しではなく、畳に上がって直に拝見する希少な機会を得ました。円山応挙と言えば、2017年に開催された京都国立博物館『国宝』展で《雪松図屏風》の迫力に圧倒された記憶があります。対して、本展の襖絵の主題は、竹の下で戯れる子犬たち。繊細で優しい筆遣いに思わず頬が緩みます。濃淡の墨で描かれた若竹の描写が実に美しい。

次の展示室では、空間に溶け込むように絵画が飾られています。こちらのコーナーには、額の色に合わせて、複数の黒い調度品が置かれています。

ロベール・ドローネー 《街の窓》

この抽象絵画は私好み。幅広の黒い額が作品を引き立てていると思います。

ロベール・ドローネー(生没年1885ー1941)  《街の窓》 1912年 油彩・厚紙

佐伯祐三 《テラスの広告》

こちらの壁に掛けられた絵画の作者は佐伯祐三。駆け寄りたいところですが、敷物の上に立ち入ることはできません。

高倍率で撮影します。人のいないテラスの背景を飾るのは雑多な広告。広告をモチーフにして茶色・緑色を多用した作品は、昨年、東京ステーションギャラリー『佐伯祐三』展でも鑑賞しました。こなれたタッチにセンスを感じます。

佐伯祐三(生没年1898ー1928)《テラスの広告》  1927年 油彩・カンヴァス

『場』をテーマに掲げた展示室を拝見してから吹き抜け空間へ。美しい建物です。

次の展示室へ向かいます。

海老原喜之助 素描

独特な作風の素描を目にしました。右の女性は拳を握った両腕を前に伸ばし、身をくねらせた左の女性は半ば目を閉じています。モデルの動作・表情には、どんな意味が込められているのでしょうか。黒く塗られた背景が、人物の輪郭を明確にすると同時に、作品に重厚感をもたらしていると思うのですが、ランダムに塗り残した意図も知りたいですね。

海老原喜之助(生没年1904ー1970) 素描 

前田青邨 《風神雷神》

軽妙なタッチの作品です。風神雷神と言えば、真っ先に思い浮かぶのは俵屋宗達《風神雷神図屏風》ですよね。本作では、上部に風神を、下部に雷神を配していますね。自在にバチを使う雷神の両腕には力がみなぎっています。おどけた表情に味があります。風神の顔を見せずに背を向けることで、雷神との距離感を生み出し、画面に奥行きを与えていると思います。

前田青邨(生没年1885ー1977) 《風神雷神》1949年頃 紙本墨画淡彩

横山大観 《神州第一峰》

横山大観(生没年1868ー1958) 《神州第一峰》   1930年 絹本著色

富士山のみを描いたシンプルな構図。冠雪を際立たせる黒い山容を取り巻く雲もまた黒黒としています。実景なのか心象風景なのか判然としませんが、風格のある作品に仕上がっています。

竹内栖鳳 《鰹図かつおず

竹内栖鳳の動物画と言えば《班猫》が有名ですよね。魚を主題にした作品、私は初見です。魚の立体感・重量感が感じられて、味わい深いです。

竹内栖鳳(生没年1864ー1942) 《鰹図》1927ー30年頃 絹本著色

高倍率で撮影。背びれがリアルです。藍色を主体に、明るい青色、茶色がかった暗い青色も施されています。

以上、印象に残った10作品をご紹介しました。見どころはまだまだ続きますが【後編】に譲ります。どうぞ、後編もご覧ください。

《空間と作品》展の会期は10月14日まで。

アーティゾン美術館 Artizon Museum, Tokyo
東京駅徒歩5分、学生無料(要予約)。印象派と日本近代洋画を中心に、古代から現代アート まで約3,000点を所蔵。美術の多彩な楽しみをお届けします。

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