冒頭は、No.162《ペンダントイヤリング》ゴールド、プラチナ、ジェイド、ルビー、ダイヤモンド 1953年頃 個人蔵。
開幕翌日に来館。来館時の要領等は【前編】で綴っておりますので、ここでは省略します。【後編】では、順路の後半に展示されている作品の中から、比較的綺麗に撮影できた作品をご紹介しましょう。グレーの文字で表記した箇所は、展示室内の解説から一部引用しました。
高貴な緑 ブルガリの革新的な色使いは、「貴石」という用語の再評価を促しました。(中略) その最たる例が緑色の宝石です。西洋の宝石学の伝統ではエメラルドは貴石とされていますが、ペリドットやジェイド(翡翠)のような石は、かつてはこのカテゴリーから除外されていたのです。(以下、割愛)
No.151 《ネックレス》 プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド 1961年 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

本作は本展チラシに掲載されています。特大のエメラルドを真ん中にして、サイズを減じたエメラルドを左右対称に配しています。
No.148《「ジャルディネット」ブローチ》 ゴールド、プラチナ、ジェイド、コーラル、エメラルド、ダイヤモンド 1969年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
花器をかたどる緑色の宝石がジェイド(翡翠)ですね。本展では、蛇をモティーフにしたブレスレットは沢山展示されていましたが、本作のように植物に見立てた作品は他に見掛けなかったように思います。
No.149 《「チャンドラフォーレ」限定版リング》ピンクゴールド、ポーセリン、ペリドット 1944年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
No.150 《「チャンドラ」ネックレス》ゴールド、ポーセリン、ルベライト、グリーントルマリン 1944年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

鈴なりのポーセリン(白磁)が可愛らしく斬新。これがネックレスとは! ゴールドと交互に組まれたピンク色のパーツがルベライトですね。素材に白磁を使用した作品も、他に見掛けませんでした。
No.163 《ブローチ》 ゴールド、プラチナ、ジェイド、ルビー、ダイヤモンド 1955年頃 個人蔵

ジェイド(翡翠)で表現されたモティーフは何でしょう。
No.158 《「サッシ」ネックレス》 ゴールド、トルマリン、アクアマリン、ペリドット、ダイヤモンド 2000年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

素材に表記されているダイヤモンドはどこ? ダイヤモンドをふんだんに使用した作品に目が慣れてしまったためか、趣向の異なるネックレスが逆に新鮮です。
色彩と感情 (前略) ジュエリーを身につけるという行為が無意味であることはほとんどなく、それはしばしば、喜び、愛、あるいは力強さといった感情と結びついています。ブルガリのクリエイションには、こうした感情の繋がりが見出されます。(中略) 「セルペンティ」コレクションでは、色とりどりの蛇の鱗が、恐怖を呼び起こすのではなく、それらの色に象徴されるこの動物の強さによって、身に着ける人にパワーを与えます。

この円形のガラスケースには、蛇をモティーフにした作品が集められています。その中から1点ご紹介しましょう。
No.170 《「セルペンティ」ブレスレット》 ゴールド、レッドエナメル、ダイヤモンド 1965年頃 個人蔵

目が光を反射し、魔力が宿っているかのようです。本作に限りませんが、普段使いにするのは難しそう。仮に、公の場でこのブレスレットを身につけるとしたら、大事な契約時とか?
No.199 《ネックレス》 ゴールド、オニキス、トルマリン、エメラルド、ダイヤモンド 1989年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

秋の装いにピッタリなジュエリーですね。洗練された女優さんが身につけたら映えそうです。
![]() | 価格:105000円 |

次の展示室へ移動する前室に、森万里子さんの作品が展示されていました。神秘的で素敵です。

森万里子《ONOGORO STONE Ⅲ》 (前略) この作品は、日本最古の書物『古事記』に語られる、イザナギとイザナミの二神による創造神話にインスピレーションを得ています。(中略) 森は、この古代の物語を呼び起こすことによって、宇宙論や霊性と先端技術が交わる接点を探求し続けています。(中略) 内なる精神の共鳴を宿すミニマルなフォルムを通して、過去と未来、神話と科学を繋ぐことに対する森の揺るぎない関心を体現しています。

No.220 《サンタンジェロ城 模型》 シルバー 2010年代 個人蔵

『美術展ナビ』サイトで「サンタンジェロ城」が取り上げられていましたので、リンクを貼っておきます⇓

Ⅲ.光のパワー
(前略) 光はまさに貴金属に命を吹き込む要素です。名高いジュエリーメゾンとなる以前、ブルガリのルーツは銀細工にありました。1884年、ソティリオ・ブルガリによってローマに創業されたメゾンの初期の作品は、その鮮やかな輝きで高く評価される素材であるシルバーか、もしくはゴールドで制作されたものでした。(中略) これらの金属は歴史を通じて富と地位の象徴とされてきました。それゆえ、古代にはどちらの金属もコインの鋳造に使われたのです。そして今日、こうした古代のコインがブルガリのジュエリーにも取り入れられ、それぞれのピースにさらなる色彩とニュアンスを添えています。
No.241 《「モネーテ」ネックレス》 ゴールド、古代ローマ共和政期の銀貨 1970年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

古代ローマ時代の銀貨!! 世界史の側面から鑑みても価値ある素材でネックレスを制作しているのですね。

No.271 《ヴァニティケース》 ゴールド、ダイヤモンド 1950年頃 マンチェスター公爵夫人旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

「ヴァニティケース」をネット検索。持ち運び用の化粧道具入れとのこと。持ち主だった公爵夫人は当然愛用されていたかと思いますが、保存状態が良いですね。複数のケースをお持ちだったのでしょうか。
No.274 《イブニングバッグ》 ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド 1962年 イタリアの俳優ロッサノ・ブラッツィの一族旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

ガラスケース内を拝見した限り、地味な色味のバッグ類が多い印象。ドレスやジュエリーが引き立つよう、小物の演出を控え目に留めたのでしょうか。
No.258《ネックレス》 ゴールド、ダイヤモンド 1992年 ナセル・アル=ラシッドとムーナ・アユーブ旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

ゴージャス!! エジプトのファラオを連想しました。
色石(カラージェムストーン)における光の効果 (前略) ブルガリの代表的な革新の一つは、古代にさかのぼるスタイルである、カボションカット※を復活させたことです。カボションカットの丸みを帯びた宝石は、表面に多数のファセット(平面)がほどこされたファセットカットの宝石とは異なり、光を通さず、それぞれの石が持つ本来の色を最も純粋なかたちで際立たせます。その結果、水や光で薄められていない、チューブから絞り出したばかりの顔料のような鮮やかな色彩の体験をもたらすことができるのです。(以下割愛)
※「カボションカット」について詳述しているサイトのリンクを貼っておきます⇓

No.321 《チョーカー》 ゴールド、パール、エメラルド、ルビー、ダイヤモンド 1987年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

パールとゴールドを組み合わせた作品。寒色のエメラルドと暖色のルビーが交互に配されています。
No.319 《コンバーチブル・ソートワール=ブローチ》 ゴールド、イエローサファイア、タイガーアイ、シトリン、ダイヤモンド 1972年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

ユニークなデザインです。中央の宝石がイエローサファイアでしょうか。それともシトリン(黄水晶)かな。
No.345 《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》 ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド 1969年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション

本展チラシの表紙を飾る作品。エメラルドの深い色が魅惑的です。チラシには、この緑色がジュエリーの背景に採用され、折ることが憚られるほど美しい仕上がりです。
以上、18点をご紹介しました。混み具合にもよりますが、所要時間の目安は1時間半。《ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧》会期は12月15日まで。
受付で配布される上質紙(A3サイズ)に、会場構成が記載されています。その下部に印刷されているQRコードを読み込むと、展示室内の解説を多言語(日本語/英語/中国語/韓国語から選択)で読むことができます。ご自宅で復習代わりに読んでも。