喧騒から離れて【東京都美術館】で感性を磨く。《大地に耳をすます 気配と手ざわり》(2024年/夏〜秋)

展覧会

本展エリアは穴場スポットかと思います。観覧料は一般1,100円。『ぐるっとパス』を呈示すると無料になります。

現代作家5人の作品が展示されています。展示作品は撮影可。作家(敬称略)毎に印象に残った作品を幾つかご紹介します。

川村喜一 (写真家)

壁面のみならず、天井から吊られたパネルにも作品が展示されていました。

荒涼とした森に生息する野生動物の姿をとらえた一枚。エゾシカでしょうか。

警戒心を露わに正面を見据える険しい目。

樹洞のエゾフクロウに焦点を当てて、作品を高倍率で撮影しました。身体が小さい上、茶混じりの白い羽毛で覆われているので、雪を被った幹に紛れてしまいそうな一枚。

ふるさかはるか(木版画家)

下記の作品タイトルは《ことづての声》。藍・土で紙に描かれた線画です。土絵の具は今回が初見かも。作家自ら採取した土でしょうか。発色の美しさに目を見張りました。

4つの器をどう配置するか、心を砕いたのではないでしょうか。織り成す層が摩訶不思議。藍色が涼感を添えます。

2020年《ことづての声》 積層の器 ドローイング

土絵の具が地層を連想させますが、実際のところ何を表現しているのか、興味深い作品です。グラデーションが美しいですね。

2020年《ことづての声》 ことづての声 ドローイング

藍色の箇所を高倍率で撮影すると文字列が浮かび上がります。

《ソマの舟》シリーズから一点紹介します

2023年 《ソマの舟》 山かけと懺悔 木版

岩木山観光協会サイトに『朔日山ついたちやま』についての記載があったので、一部引用します。

“お山参詣は、向山、宵山、朔日山と3日間行われます。(中略)最終日の3日目は、旧暦8月1日の「朔日山ついたちやま」。参拝者は岩木山の山頂を目指して未明に出発します。懐中電灯などの明かりを頼りに岩場を登り、山頂付近でご来光に向かって手を合わせます。”

高倍率で撮影。細部まで神経の行き届いた佳作に魅了されました

ミロコマチコ(画家・絵本作家)

地下2階の大展示室。作家がインスピレーションで描いた大作が壁面に並び、そのスケールに圧倒されます。

奄美大島をイメージした新作が展示室中央に展示されています。設営はさぞや大変だったことでしょう。

円の外壁を飾る絵本《みえないりゅう》原画17作品の中から幾つかご紹介します。

豊かな水流。植物の生命力がみなぎっています。水辺にはカエルやトンボ。飛び去る鳥も

赤色で塗られたものはエネジーでしょうか。自分に柔軟な発想力がなく残念。

渦を巻き起こしているのは龍でしょうか。逞しい脚が何かを探しているようでもあり…。

林立しているのは生物なのか物体なのか、それすら判別できない世界。

一方向へ泳ぐ魚群をよそに、気ままに泳ぐ個性的な魚が散見されて、楽しい作品。ウミガメの向かう先はどこでしょう。

視力回復に活用される図柄を連想しました。眺めているうちに立体的に見えてくる?

龍の顔の青色が派手な色調の画面をぐっと引き締めているように感じます。

壁面に展示されていた作品も幾つかご紹介しましょう。

2023年 《うみわたり》 ミクストメディア、木製パネル
2023年 《かさねうみ4》 アクリル、木製パネル

この作品の色彩は素敵。高倍率で撮影。

青色が一際目を引く作品。青色と黄色の組み合わせが華やかです。

2020年 《満月のこども》 アクリル・メディウム・ビニール、泥染め木綿、木製パネル

前衛的な絵画は自分の嗜好と異なるのですが、エネルギッシュな作風にいつしか惹き込まれていました。

榎本裕一(画家)

自然の織り成す造形を表現したモノクロ作品。日常と隔絶された世界観に圧倒されます。

2024年《結氷》ウレタン塗料・インクジェットプリント・   アルミパネル
2024年《結氷》ウレタン塗料・インクジェットプリント・   アルミパネル
2024年《結氷》ウレタン塗料・インクジェットプリント・   アルミパネル

倉科光子(画家)

見事な細密画に魅了されました。かつて津波に襲われ、もしくは放射性物質に汚染され…。そんな土地に芽吹いた植物を愛おしむ画家の真心が伝わってくる珠玉の作品群をご紹介します。

キャプションによると“群馬県”において“津波から1年後 初夏”の“ホットスポット”を描いた一枚。こんなにも沢山、芽吹いたのですね。

2012年 《Certain place in Gunma》 透明水彩、
水彩紙

キャプションによると、“岩手県”において“津波から2年後 初夏”を描いた一枚。この植物は“マルミノシバナ”とのこと。アスファルトの隙間に種がこぼれ落ちたのでしょうか。逞しく育っている様子が、町の復興を連想させます。

2018-21年 《Certain place in Iwate》展示は複製
透明水彩、水彩紙

キャプションによると、“岩手県宮古市”において“津波から4年後 初夏”を描いた一枚。この植物は“ハマエンドウ”とのこと。画面を覆う植物の緑色と小花の紫色の取り合わせが涼やか。

2015年 透明水彩、水彩紙

キャプションによると、“福島県南相馬市”において“津波から5年後 夏”を描いた一枚。この植物は“ミズアオイ”とのこと。水面に映る植物の影までリアル。癒やされます。

2016-20年 透明水彩、水彩紙

キャプションによると、“福島県南相馬市”において“津波から8年後 初夏”を描いた一枚。水中に繁茂する植物は“ツツイトモ”とのこと。水面から突き上げるように茎を伸ばす植物の成長の速さが窺えます。

2019-20 透明水彩、水彩紙

キャプションによると、“宮城県仙台市”において“津波から11年後 初夏”を描いた一枚。この植物は“ハマヒルガオ”とのこと。砂丘で咲き誇るハマヒルガオが、日常を取り戻した住民一人ひとりの安堵感を表現しているようでもあり…。

2022年 透明水彩・鉛筆、水彩紙

大きなガラスケースに納められ展示されていた《「tsunami plants」のための習作》を拝見。習作とは思えない完成度の高さに驚きます。水性ペンの描線から芸術が生み出されるとは。

2015年 水性ペン、手漉き紙

以上、展示作品の一部をご紹介しました。才能と創作意欲にあふれる現代作家5人の足跡を辿る展覧会を是非会場でご堪能ください。《大地に耳をすます 気配と手ざわり》展の会期は10月9日まで。

東京都美術館
東京都美術館の公式サイトです。多彩なラインナップで古今東西の美をお届けします。

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