東京都美術館ギャラリーA・Cにて《ノスタルジア―記憶のなかの景色》開催中。

展覧会

ギャラリーA・Cにて《上野アーティストプロジェクト2024 ノスタルジア―記憶のなかの景色》が開催されています。会期は11月16日から2025年1月8日まで。観覧料は一般500円(田中一村展の半券チケットを呈示すると無料)です。

出品作家は以下の8名。(展示順、敬称略)

✦阿部達也  ✦南澤愛美  ✦芝康弘   ✦宮いつき  ✦入江一子  ✦玉虫良次  ✦近藤オリガ ✦久野和洋

本展は章立ての構成になっています。作家さん毎に印象に残った作品をご紹介しましょう。

Q&Aパネル

⇧展示作品の傍らに、作家さんへの質問&回答コーナーが設けられています。8項目の質問中、特に興味を引いたQ3『懐かしい記憶は、視覚だけでなく、聴覚(音、音楽など)、触覚(皮膚感覚)、味覚、嗅覚などとも結びついていると思いますか?絵で表現する工夫などあれば教えてください』に対する作家さんの回答も併せてご紹介します。

第1章 街と風景

“(前略)現代にあっても、画家たちは季節によって変化する街の風景を、光、空気、水、色彩の微細な変化を含めて、慈しむように描き出そうとしています。”(パネル解説より一部引用)

阿部 達也 

阿部達也は、2011年3月11日の東日本大震災前後から、絵画から人の姿が消え、海や川や空、そして遠景に見える街や道が主役の静謐な風景画を続けて描くようになりました。”(パネル解説より一部引用)

Q3に対する回答=“視覚の記憶というのは聴覚や味覚、嗅覚と比べると、随分と曖昧なもののような気がします。絵画とは他の鋭敏な感覚器官からすると少々不親切な、視覚中心の媒体だからこそ、鑑賞者の記憶と合致しなくてもよいのではないかと。描かれたものが、あゝこんなこともあった、これはいつか見た景色のようだ、といったような共感覚さえ得られれば、後は見る側の人間が自由に自分に引き寄せることができるのが面白いところだと思います。”(パネルより一部引用)

阿部達也《Waterside(福島県いわき市折戸岸浦)》 2012年 油彩、カンヴァス 作家蔵

まさに“空が主役”の風景画ですね。ここまで思い切った構図を初めて観ました。帯状に描かれた海は至って穏やか。繰り返し打ち寄せる波の音がかすかに聞こえてくる…そんな静けさを体現しています。刻々と変化する雲を無心で眺めていたのは何時のことか。誰しもその記憶を辿りながら、見上げさえすれば自然の移ろいを感じられる日常を再発見するのではないでしょうか。

阿部達也《手賀沼 東端(千葉県柏市)》2016年 油彩、カンヴァス 作家蔵

忽ち魅了される作品。「手賀沼」をネット検索。柏市・我孫子市・白井市・印西市にまたがる湖沼なのですね。画面を二分する空。水色・淡黄色・桜色で表現されたグラデーションが美しい。(実景とは思いますが、)向こう岸のボリューム感が良いですね。近景の草地との対比が効いています。画家の繊細な感覚が伝わってきます。(どの角度から撮影しても照明の映り込みを回避できません。会場で是非ご覧ください。)

阿部達也《多摩川(東京都昭島市)》2021年 油彩、カンヴァス 作家蔵

日本画?と錯覚してしまうほど透明感のある作品です。本作も画面を二分する空の描写が特徴的。川の流れは認められず、空を映した水面は静か。ほぼ中央に描かれた樹木に自ずと視線が向かいます。遠景には橋桁・建造物が描かれていますが、それら人工物が目障りにならない、その匙加減も良いと思います。

自分好みの画風なので、他の作家さんより掲載数が多くなってしまいました(-_-;)

南澤 愛美

“南澤愛美は、一見平凡に見える都会の情景を色彩リトグラフで描き出す若い版画家です。川や釣り堀、銭湯など水のある情景が多いのですが、近寄ってよく見ると釣りをしているのは、服は着ているものの人間ではなく、彼女が大好きだというペンギンや鳥や犬や熊です。”(パネル解説より一部引用)

Q3に対する回答=“懐かしい記憶は、他の感覚とも強く結びついていると思います。むしろ、匂いを嗅いだり音楽を聴いたりすることで、記憶が鮮明によみがえることが多いため、私にとっては視覚以外の感覚の方が強く結びついているのではないかと感じます。その中でも特に触覚(温かさや肌感覚)の表現を探求しており、最近はどうすれば温度や空気の動きを絵で表現できるかを考えています。”(パネルより一部引用)

南澤愛美《よよぎ夜行》2024年 リトグラフ、インク、紙 作家蔵

目が釘付けになりました。奇想天外とも思える画家の発想力。服を着た動物たちが夜の代々木公園(でしょうか?)を闊歩している光景。後ろ姿だからこそ尚更インパクトがあります。尻尾で正体がばれる昔話はありますが、この動物たちは正体を隠すでもなく、堂々と二足歩行をしています。モノクロであることも効果的だと思います。(煩雑になるから省略したのだとは思いますが、)手前の動物の影が描かれていない点も不気味。この一帯に魑魅魍魎が出現したようにも思えてきます。

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感想(74件)

第2章 子ども

芝 康弘

“芝康弘は、少年たちが田んぼでオタマジャクシに見とれる姿や、美しい夕暮れに包まれたり、仲間たちと過ごしていたりする姿、さらには少女が馬と視線と心を通わせている姿などを、丁寧かつ穏やかな筆致で描き出して見せてくれます。”(パネル解説より一部引用)

Q3に対する回答=“日本画の中ではかなり写実的に描く方だと自覚しています。視覚にかなり寄った表現ということになります。ですから表現する上でそれ以外の感覚を呼び覚まして描くということはしません(自覚がないだけかもしれませんが)。観て頂く際に温度感や音色、ストーリーをいろいろと想像してもらえる様な絵になればいいなとは思って描いています。(パネルより一部引用)

芝康弘《いつもの此の道》2017年 紙本彩色 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

本展チラシに掲載されている作品。昭和生まれ(と言っても昭和40年代以前になるでしょうか)が子供の頃を懐かしむと、この光景に行き着くのではないかと思います。夕暮れに近い時間帯でしょうか。兄弟らしき2人が農道に佇んでいます。捕虫網を手にした少年は何やら思案顔。鑑賞する側で三者三様のストーリーが出来上がりそうですね。

芝康弘《いつもの此の道》部分
宮 いつき

“宮いつきの絵画は、少女たちが室内でまどろんでいたり、どこか遠くを見つめて瞑想に耽っていたりする白昼夢のような情景が印象的です。子どもたちが、平面的で装飾的な背景と溶け合って、美しい色彩のハーモニーを奏でています。”(パネル解説より一部引用)

Q3に対する回答=“聴覚とか嗅覚はより記憶に作用するのではないかと思います。(中略)昔、六曲屏風を描いた事がありますが、テーマを五感として最後の六曲目は「第六感」とし、人が生まれてから獲得していく感覚を一曲ずつ描きました。”(パネルより一部引用)

宮いつき《双子座》1999年 紙本彩色 文化庁蔵(平塚市美術館寄託)

室内で身を寄せるように座る姉妹(かな?)が描かれています。退屈しのぎに綾取りをしているかのような表情にも見受けられます。2人の座るソファも背景の壁も、形があるようでないような…。この不思議な空間に身を置く彼女たちはよほど複雑な事情を抱えているのではないかと想像しますが、そこで思考が止まってしまいました。

宮いつき《聞き手と話し手》2011年 紙本彩色 作家蔵

クリムトの絵画を連想させる装飾性を帯びつつ、そのテーマに関心が向きます。話し手の女性は何を告げたのか、聞き手である少女は口を引き結び、厳しい表情を見せています。話し手の女性が右手に抱える長い棒は何を意味するのか。少女だけ靴を履いているのは何故か。画面を構成する細かなディテールも気になります。浮遊しているようには見えませんが、何処に立っているのか定かではありません。夢か現実か、判然としない世界を形成しています。

第3章 道

入江 一子

“入江一子は、かつて20代の頃に心を動かされた満州の広大無辺な空の記憶を、イスタンブールで見た朝焼けに重ねて描いています。シルクロード(絹の道)の街で暮らす人々の異国情緒にあふれた景色のなかに、彼女の共感が色彩となって溶け込んでいます。”(パネル解説より一部引用)

入江一子《シルクロードを行く(カブールのバザール)》1974年 油彩、カンヴァス 入江一子シルクロード記念館蔵

山の斜面に展開する色彩豊かな建物群を背景に、ターバンを頭に巻く男性、全身を覆う女性が多数集まる光景を描いた作品。近景に描かれている動物は羊かな。バザールでは、こうした家畜の売買も盛んだったのでしょうか。

玉虫 良次

“玉虫良次は、活気に満ちた昭和の庶民の暮らしを想い出しながら、架空の街の情景を作り出しています。”(パネル解説より一部引用)

Q3に対する回答=“絵画は無音のような空間なのでじっくり時間を楽しめ、後から記憶と結びついて、忘れていた事を思い出したり、じわじわ効いてくる。それも画像・電子画面などより、リアルな画面・絵肌・筆致・目から入る色と素材に、脳の深いところで感覚が素直に反応しているのが分かる。描くという行為をイメージしながら追体験するように見るからだろうか。”(パネルより一部引用)

玉虫良次《epoch》2019−23年 油彩、カンヴァス 作家蔵 194cm×1590cm

広い展示室の壁一面を占める力作です。街の雑踏を行き交う人、人、人。多くの公共交通機関も見受けられます。この絵画を拝見すると、世界のどの街にあっても、こうしたエネルギッシュな人間の活動は永続していくであろうことを予見させます。

近藤 オリガ

“近藤オリガは、故郷ベラルーシの厳しい気候、父親が子どもだった頃の古い写真、自分の息子や娘、飼っていた犬、そしてひまわり、ザクロ、レモンなど懐かしい花や果物が空に浮かんでいるような幻想的絵画を作り上げています。”(パネル解説より一部引用)

Q3に対する回答=“故郷の草花、木々を異国で見た時やその匂いが漂ってきた時にも想いは故郷に飛びます。(中略)故郷の森の景色が心の視界に入ってきます。冬の森は寂しく雪に覆われ長い眠りにつき雪解けの春を待ちます。私の作品には度々ひっそりと立つ一本の木や、冬景色が描かれています。もの悲しさのあとに続く希望の春の到来を待ちわびています。(パネルより一部引用)

近藤オリガ《月下のレモン》2022年 油彩、カンヴァス 個人蔵

切り口の瑞々しいレモンは何かを比喩しているのでしょうか。一部が背景に融合しています。この立体的な背景は何なのか。謎が謎を呼びます。想像力の及ばない深遠な世界に惹きつけられます。

久野 和洋

“久野和洋は、48歳の時に出会った古代エトルリアの遺跡のある土地、タルクイーニアの大地を「忘れがたき懐かしの地」として、繰り返し《地の風景》を描き続けてきました。この大地と道を何度も描き続けることによって、古代の人々も見ていた神秘的な輝きを感じ取ることができるといいます。”(パネル解説より一部引用)

久野和洋《地の風景・刻刻》2004年−05年 油彩、カンヴァス 株式会社名古屋画廊蔵

《地の風景》シリーズにあっては、空の表現を最小限に留め、遠景に山並みを、中景に土の露出した丘を描いて「地」を主軸にしたのでしょうか。近景に樹木を配することで、垂直方向に動きが生まれ、より大きな空間が生み出されたように思います。

以上、印象に残った作品の一部をご紹介しました。是非、会場に足を運んでご覧ください。

m(_ _)m 実は、入江一子さん、久野和洋さん、お二方の『質問&回答コーナー』の撮影を忘れてしまいました。残念です。自分に対しても。

《上野アーティストプロジェクト2024 ノスタルジア―記憶のなかの景色》会期は2025年1月8日まで。

ギャラリーBにて《懐かしさの系譜》が同時開催されています。観覧無料。

上野アーティストプロジェクト2024 ノスタルジア─記憶のなかの景色 展 展覧会公式サイト|東京都美術館
本展では、懐かしい風景、そしてノスタルジア(nostalgia 英語で郷愁の意味)について考えたいと思います。「ノスタルジア」とは、もともとギリシャ語の「ノストス(家に帰ること)」と「アルゴス(痛み)」の合成語で、故郷へと帰りたいが、けっし...

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感想(13件)

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