郷さくら美術館《那波多目功一の世界》を鑑賞。(2024年12月〜2025年2月)

展覧会ダイジェスト版

 過去の展覧会ダイジェスト版となります。

副題は《花と生命いのちへのまなざし》。2024年12月7日から2025年2月24日まで開催されていました。

郷さくら美術館の外観

那波多目なばため 画伯の作品は、別の美術館で幾度となく拝見しました。卒寿を過ぎた画伯の足跡を辿る貴重な機会とあって、さとさくら美術館を初訪問。印象に残った展示作品を順にご紹介しましょう。尚、緑色で表記した箇所はキャプションより(一部)引用しました。

1階A展示室

1階A展示室の光景

惜春せきしゅん 2007年 個人蔵(茨城県近代美術館寄託)

『惜春』 2007年 個人蔵(茨城県近代美術館寄託)

春がもう少し長く続いてくれたなら、もう少し花の青春が、花の命が長らえたものを。過ぎゆく時を惜しみながらの作品となりました。人の人生もまた、同じこと。〈那波多目功一〉《作家の言葉》より引用

『惜春』 部分

白い牡丹をモティーフにした作品こそ那波多目画伯の真骨頂。雨粒が当たればハラハラ散ってしまうであろう一瞬を予見させます。深い背景色にも魅了されました。地面との境界線がやや曖昧ながら、散った花びらによって土の存在が示され、安定した構図を形成しています。

昇陽菊図しょうようきくず 1999年 郷さくら美術館蔵

『昇陽菊図』 1999年 郷さくら美術館蔵

何とか菊の品位が表現できたらと思い、葉の色を抑え、菊の花びら、白の流れを考えました。〈那波多目功一〉《作家の言葉》より一部引用

『昇陽菊図』 部分
『昇陽菊図』 部分

初見ということもあり、本展で最も感動した作品。金地と白色の取り合わせが一際映えます。あでやかな白菊の群生を2カ所に配置し、昇る太陽を小さな群生の彼方に配置した構図の巧さ。太陽の右下部分を隠しているのはでしょうか。

じゃく 1995年 郷さくら美術館蔵

『寂』 1995年 郷さくら美術館蔵

母を亡くしたこの年、心の中にポッカリと空洞が出来てしまい、どうする事も出来ない心の寂しさを感じていました。今年の作品は何としても心に張りのある凛としたものを描きたい。その想いから、それまで温めていた竹垣(建仁寺垣)の中に花を描くモティーフを作品としました。母の面影を牡丹の花に託しました。〈那波多目功一〉《作家の言葉》より引用

竹垣をモティーフにした一枚。公式サイトで拝見した画像では、この竹垣が金色に輝いて見えましたが、実際は芥子色。画伯のお母様は、この牡丹花のように凛とした方だったのでしょうね。

昇陽(ディアナ神殿)2006年 郷さくら美術館蔵

昇陽(ディアナ神殿) 2006年 郷さくら美術館蔵

悠久の時の流れ、太陽はその時と変わらず今も輝き続けている神々しい空気、いつの時代にも神がいる、そんな思いで描きました。〈那波多目功一〉《作家の言葉》より一部引用

太陽神を崇めた時代にあっては、比類なき輝きを放って神殿を照らす日の出は、人々の精神的支柱だったのでしょうね。

奥にスキップフロア『B展示室』があります。

1階B展示室

松山 1950年 茨城県近代美術館蔵

『松山』 1950年 茨城県近代美術館蔵

高校二年生で院展に初出品し、初入選した作品。高校生で絵を始めたきっかけは、毎年院展で落選続きの父に代わって自分が入選しようと決心したためであった。(中略)傍らで父に絵具を溶いてもらいながらまず空を塗り、次に林の奥になる部分を塗った後、左から順番に仕上げていったという。〈稲葉睦子氏〉《作家の言葉》より一部引用

那波多目作品と言えば、静謐な空気を纏う幻想的な世界を描く印象。異色とも思える本作は17才時の作品。院展初出品作が入選、とは信じ難い才能です。お父様のご指導の下、画業をスタートさせたエピソードに心温まりました。

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感想(5件)

2階展示室 

(前略)全国の名所・名木を描いた作品を中心に「桜」の絵画10余点をご紹介いたします。《桜百景》より一部引用

春に憩う 2014年 郷さくら美術館蔵

『春に憩う』 2014年 郷さくら美術館蔵

何か写生するものはないかと題材を求めて多摩自然動物園へ行きました。園内に孔雀が放飼になっており木にとまっている姿が絵になる姿として目に映りました。急ぐにその場で写生にとりかかりました。今から二十年以上前の事です。昨年(平成二十六年)やっと絵にする事が出来ました。〈那波多目功一〉《作家の言葉》より一部引用

『春に憩う』 部分
『春に憩う』 部分

満開の桜✕孔雀の取り合わせは初見。平凡になりがちな春の景色を一変させる取り合わせ。孔雀が3羽揃うと優美です。右の2羽はシンクロしていました。孔雀の下の余白が絶妙。高い枝に止まっているであろうことを想像しました。

北城ほくじょうの春 2008年 郷さくら美術館蔵

『北城の春』 2008年 郷さくら美術館蔵

取材は青森の弘前城です。弘前城の桜を写生するのに三年かかりました。(中略) その優雅さはお城の美しさと相まってなんとも言えない甘いすばらしい感動となって私の心に響いてまいりました。〈那波多目功一〉《作家の言葉》より一部引用

石垣の手前が地面なのか堀なのか判然としませんが、堀かな? 中景に描かれた枝垂れ桜が水面にかかっているようにも見えました。近景に桜の木を配して大空間を取り込んでいます。

『北城の春』 部分

古都の春 2017年 郷さくら美術館蔵

『古都の春』 2017年 郷さくら美術館蔵

近景、中景、遠景と綺麗に揃う構図。ほぼ白色で描かれた中景は、一面の桜でしょうか。日本に生まれたからには、一度はこんな景色を拝みたいものです。連なる山には霞がかかっているのでしょうか。

『古都の春』 部分

3階展示室

待春たいしゅん 2009年 茨城県近代美術館蔵

『待春』 2009年 茨城県近代美術館蔵

長い寒い冬を耐え、やっと待ちわびた春を迎えて、花も喜びながら宙を舞う姿、時間を超えて春を待つ喜びを身体全体で表現した架空の世界を描きました。〈那波多目功一〉《作家の言葉》より一部引用

『待春』 部分

新芽が沢山出ている植物を見ると、気持ちが高揚します。画伯のコメントによると、タイトル『待春』の解釈は「待ちわびた春を迎えた」です。まさか、架空の世界だったとは。

年年歳歳 2000年 ひたちなか市蔵

毎年、毎年、花は変わることなく咲くが、人は年とともに老いていく。(中略)春になると可憐なリンゴの花が咲き、小さな実をつけ、やがて大きな実となって色づくというリンゴの一生が、人の一生と重ねて描かれている。〈稲葉睦子氏〉《作家の言葉》より一部引用

『年年歳歳』 2000年 ひたちなか市蔵
『年年歳歳』 部分

視点はどこなのか、不思議な作品。斜め上からリンゴの低木を見下ろしているようにも見えました。右の緩やかにカーブした幹から、たわわに実った枝を差し伸べているような…。植物の一生に人の一生を重ねる鋭敏な感覚がさらなる創造性を育んだのですね。

明けゆく(アッシジ)2001年 郷さくら美術館蔵

『明けゆく(アッシジ)』2001年 郷さくら美術館蔵
『明けゆく(アッシジ)』 部分

半分は夜が明けていない中、もう半分は明けようとしている。そんな微妙な時間帯をとらえた作品。刻一刻と移り行く空の色が美しい。

3階 さくら之間

カフェ自販機が備え付けられていました。休憩したり、語り合ったり、室内の資料(約400冊)を閲覧したりできるようです。

下りは階段を利用しました。

余談① 2階から1階へ続く階段の踊り場に、ミュージアム・ショップがあります。『春に憩う』をモティーフにしたクリアファイルを購入しました。

余談② 撮影にあたり、別の展示作品が多少映り込んでしまいました。照明の映り込みを回避すべく角度を工夫しましたが、免れるのは難しい。

余談③ 重要文化財《旧朝倉家住宅》が徒歩圏内(7〜8分)にあります。時間に余裕があれば、そちらも見学されてはいかがでしょうか。観覧料は一般100円。所要時間は、庭園も含めて40分ほど。

展覧会 2024年 那波多目功一の世界展 - Sato Sakura Museum
郷さくら美術館特別展「那波多目功一の世界—花と生命へのまなざし—」。本展は、日本画壇を代表する現代日本画家・那波多目功一先生の約75年にわたる画業を振り返る回顧展となります。写生に基づいて制作された自然の美をどうぞご堪能ください。

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