特別展《HAPPYな日本美術―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―》会期は12月14日から2025年2月24日まで。
入館料は一般1,400円(ぐるっとパス提示で200円引)。本展に限り、大学生・高校生に【冬の学割】(入館料500円)が設けられています。展示作品の撮影は原則不可。本展は章立ての構成。印象に残った作品をご紹介しましょう。
第1章 福をよぶ―吉祥のかたち
No.1 柴田是真《子日図》1882(明治15)年 絹本・彩色 山種美術館蔵
正月の最初の子の日、野辺に出て小松を引き抜いて遊ぶ行事を「小松引き」という。中国の風習が原型とされ、日本では奈良時代以降、初子の日に宮中で宴が行われるようになった。(キャプションより一部引用)
所蔵品の質の高さに改めて感服。童子(キャプションより)を伴った貴人(キャプションより)が描かれています。2人の着衣は若松を思わせる上品な緑色。貴人の佇む姿はゆったりとして雅やか。背景には「小松引き」を楽しむ5人の人物が淡墨(キャプションより)で描かれています。そんな光景がそこかしこで繰り広げられたのでしょうか。貴人と童子は「小松引き」を見物しているようにも見えます。
No.12 横山大観、川合玉堂、竹内栖鳳《松竹梅》1934(昭和9)年《松》絹本・墨画淡彩、《竹》《梅》絹本・彩色 山種美術館蔵
大正13年、三越は当時の画壇を代表する日本画家6名による淡交会を企画し、会は昭和10年まで続いた。本作品は、そのメンバーであった、横山大観、川合玉堂、竹内栖鳳の3人による合作。(キャプションより一部引用)
三幅対の掛け軸です。中央に横山大観《松》、右に川合玉堂《竹》、左に竹内栖鳳《梅》が展示されています。右から順に松・竹・梅、ではないのですね。《松》には、絵の具の上から墨を重ねた堂々たる松が3本描かれています。淡彩で描かれた《竹》・《梅》とは好対照。《竹》は、構図の巧さに目を奪われます。画面の上半分は余白(落款のみ)。下半分に竹林が描かれています。(親子らしき)3羽の雀が描き込まれ、竹林と相まって風情があります。竹林には墨(と見まがうほど濃い)色も施され、その濃淡も見どころ。《梅》は淡彩で仕立てられた作品。沢山の花をつけた数本の梅が画面を彩ります。青緑色・薄い朱色の組み合わせで表現された丘・山が何とも美しい。
No.14 下村観山《老松白藤》1921(大正10)年 紙本金地・彩色 山種美術館蔵
松に藤の花がかかるさまは、古くから和歌に詠まれ、『源氏物語』にも登場する。絵画や工芸の題材としても人気が高く、晴れ着の文様に用いられるなど、吉祥主題としての側面も持つ。左隻第5扇には熊蜂が描かれているが、蜂は「封(領土を与えられる)」に音が通じることから、出世を象徴する吉祥のモティーフでもある。本屏風は明治神宮造営局の命により、伏見宮家に奉献するために制作された。(キャプションより一部引用)
六曲一双屏風。黒縁に金地が映えます。左右に分かれても尚たくましく太い幹は、下方にも枝を伸ばし、緑豊かな葉を繁らせています。孔雀が羽を広げたように美しい無数の葉が、鮮やかな緑色で表現されています。葉の先端に使用された淡色も効果的。老木に絡みつく蔓から房を提げた藤がまさに花盛り。重みさえ感じる見事な白藤と老松との競演に魅了されます。
価格:1630円~ |
No.18 伊藤若冲《鶴図》18世紀(江戸時代) 紙本・墨画 個人蔵
本作品では、つがいの鶴が松とともにのびやかな筆致で描かれる。鶴は不老不死の仙境である蓬莱山に住むとされ、長寿のシンボルとして親しまれてきた。また、生涯つがいで連れ添うことから、夫婦円満の象徴にもなっている。(中略)吉祥性と鑑賞性と兼ね備えた画題として人気を博した。(キャプションより一部引用)
鶴の脚線美に息を呑みました。狩野永徳『花鳥図襖』に描かれた鶴の描線にかつて魅了されましたが、双璧と申し上げて良いかと思います。
No.23 伊藤若冲《鶏図》18世紀(江戸時代) 紙本・墨画 個人蔵
若冲の構図は完璧。縦長の画面に、片足立ちの鶏がダイナミックに描かれています。黒黒とした精悍な尾。程よくデフォルメされたボディ。青海波に似た羽の連なる胸。墨の濃淡・墨量で見事に描き分けています。毛を逆立たせ、一方を凝視する目には、何者かの不意の出現に驚いたような緊迫感があります。
No.32 川端龍子《鯉》1930(昭和5)年 絹本・彩色 山種美術館蔵
水中をゆったりと泳ぐ5匹の鯉を描く。龍子は若い頃から伊豆・修善寺の新井旅館を訪れ、温泉につかりながら池の鯉を眺めるうちに鯉に興味を持ち、好んで描くようになったという。4匹の黒鯉に1匹だけ緋鯉を加えた同趣向の作例に《五鱗》(当館)があり、龍子がこの構成にこだわりをもっていたことが分かる。(キャプションより一部引用)
額装された縦長の作品が一対になっています。左側に展示された作品に、緋鯉を含めた3匹の鯉が描かれています。手前に向かって静かに近付いてくる鯉は、リアルに生々しい。緑色・オレンジ色で表現された池の水が、鯉にとって快適な環境であることを想像させます。精緻に描かれた鯉の上に、水流を表す細い線が重ねられ、その加減が絶妙です。
No.40 狩野常信《七福神図》17−18世紀(江戸時代)絹本・彩色 山種美術館蔵
本作品では、七福神とともに吉祥画題の唐子が登場し、子どもの愉快そうな表情が観る者を楽しませる。周囲には松竹梅も盛り込まれ、めでたさ満点の図様である。余白には金砂子や切箔がふんだんに使われる。(キャプションより一部引用)
常信は狩野尚信(探幽の弟)の長男(キャプションより)とのこと。探幽の甥だけあって、非常に見応えのある巻物です。場面が転換しながら、布袋→弁財天→大黒天→福禄寿→恵比寿の順に描かれています。弁財天は琵琶を弾き、大黒天は打ち出の小槌を振り、恵比寿は鯛を釣り上げています。周辺を駆ける子ども達が生き生きと猫写されています。松・白梅等が場面転換としての役割をさりげなく担い、小舟で海上へ漕ぎ出た一行へと場面が展開していきます。魚籠には恵比寿様が釣り上げた沢山の鯛が入っています。
第2章 幸せをもたらす―にっこり・ほのぼの・ほんわか
No.53 柴田是真《墨林筆哥》1877−88(明治10−21)年 紙本・漆絵 山種美術館蔵
蒔絵師で絵師でもあった是真は、粘性の高い漆を使って紙に絵を描く独自の「漆絵」を考案し、人気を博した。本作品は漆絵30図を収めた画帖で、風景、動物、野菜、茶道具など、さまざまな画題が描かれる。(キャプションより一部引用)
第1展示室、最初のガラスケース内に展示されています。本展で最も魅了された作品の一つ。琵琶を爪弾く、蛙を擬人化した絵柄が、北斎作品や暁斎作品を連想させます。落ち葉の上にあぐらをかいた蛙がバチ代わりにしているのはイチョウの葉。六匹もの蛙が琵琶の音色に聞き入っている場面が微笑ましい。学芸員さんに確認したところ「場面替えの予定はありません」とのこと。“漆絵”についても教えていただきました。キャプションを読んだ段階では、漆も使用されているのか…と思っただけなのですが、学芸員さんの説明によると、使用されている全ての色が「漆」の成せる技。鮮やかな発色に驚きました。会場で是非ご覧ください。
No.44 埴輪《猪を抱える猟師》5−7世紀(古墳時代) 土製 個人蔵
本展で唯一撮影できる作品。戦利品を得た顔が満足げです。左手は、小脇に抱えた猪を見せようと仲間を招いているかのよう。仕留められた猪の表情はあどけなく哀れを誘いますが、猟師の歓喜がそれを上回ります。
No.55 山口華楊《生》1973(昭和48)年 紙本・彩色 山種美術館蔵
それは何時の頃か、おそらく戦前と思う。夏の暑いある一日、山陰地方の山村へ写生に行って、ある田舎家に休息した。(中略)外の強烈な夏の陽光から遮られた、うす暗い室の中に何やら真黒いかたまりが動いていた。かすかな明り窓の光線でよく見ると、それは生れて間もない仔牛であった。(キャプションより一部引用)
第2展示室に展示されています。ひとつの生命を丁寧に描写した繊細な感覚に感じ入りました。真っ直ぐこちらを見る仔牛の瞳は澄み、より尊さが増します。素朴なモティーフ(納屋)も美しく感じられました。
観覧時間の目安は1時間〜1時間半です。《HAPPYな日本美術》の会期は2025年2月24日まで。
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