アーティゾン美術館《クロード・モネ―風景への問いかけ》(2026年2月〜5月)を鑑賞。【後編】

展覧会

section6」〜「section11」。撮影することのできた展示作品から、印象に残った18点をご紹介しましょう。茶色の文字で表記した箇所は展示室内の解説より一部引用しました。

尚、本展の会期・入館料・要領等については【前編】でご案内しましたので【後編】では省略します。

Section6 1880年代の風景探索

(前略) 1880年から1885年の間、モネは毎年、あるいは一年のうち何度もノルマンディーの地を訪れた。エトルタでは、師と仰ぐドラクロワやブーダン、ヨンキント、クールベといった画家たちと競うかのように、幾度となく制作を重ねている。エトルタは、断崖絶壁、海面に切り立つ岩の尖塔や、門のような岩といった人目を引く奇景の地で、作家たちにもツーリストにもよく知られていた。(以下、割愛)

No.57 クロード・モネ 税関吏の小屋、午後の効果 1882年 油彩・カンヴァス ドゥアーヌ美術館(オルセー美術館からの寄託)

クロード・モネ《税関吏の小屋、午後の効果》 1882年 油彩・カンヴァス ドゥアーヌ美術館(オルセー美術館からの寄託)

『税関吏』をネット検索しました。仕事内容の一項目に「沿岸警備・密輸船の追跡」。ということは、役人が詰めていた小屋でしょうか? 天候が悪化する前兆なのか、波がやや荒く見えます。タイトルにある『午後の効果』とは?

クロード・モネ 《税関吏の小屋、午後の効果》 部分

No.63 クロード・モネ 雨のベリール 1886年 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館

クロード・モネ《雨のベリール》 1886年 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館

雨脚を表現しているのか、絵筆の筋が斜めに走っているように見えます。海面は激しく波打っていますね。日本画を思わせる海面の色に惹かれました。

No.62 クロード・モネ 嵐、ベリールの海岸 1886年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ 《嵐、ベリールの海岸》 1886年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

No.63、No.62共、敢えて悪天候の時、断崖へ出掛けて行ってスケッチした訳ですよね。画家も写真家もある意味、過酷な職業です。

No.54 クロード・モネ 戸外人物習作―日傘を持つ右向きの女 1886年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ《戸外の人物習作―日傘を持つ右向きの女》   1886年 油彩・カンヴァス オルセー美術館
クロード・モネ《戸外の人物習作―日傘を持つ右向きの女》部分

ネット検索したところ、妻カミーユ・長男ジャンをモデルにした《散歩、日傘をさす女》が1875年頃に制作されています。カミーユ夫人の他界後、再婚したアリスの娘シュザンヌをモデルに、左向き・右向きの《日傘をさす女》が1886年に制作されています。本作は3作目。《散歩、日傘をさす女》を四半世紀前、おそらく拝見しています。画像で比較する限り、その1作目が断然良いと思います。

No.55 クロード・モネ オランダのチューリップ畑 1886年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ《オランダのチューリップ畑》1886年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

視界の拡がる景観、花の絨毯、風車。花弁の形状はチューリップと断定できませんが、こうした条件が揃うと赤い花=チューリップに見えてくるから不思議です。

Section7 ジャポニスム

日本の美術は、1860年代から20世紀初頭にヨーロッパが経験した芸術における物の見方の改革に寄与した。(中略) すなわち葛飾北斎(1760−1849)や歌川広重(1797−1858)をはじめ浮世絵作家の多くの版画の中に、フランスの芸術家たちは色彩、素描、配置、遠近法、形態について新しい表現を発見した。(中略) モネと浮世絵の出会いについて、モネが日本からの輸入品の包装紙として使われていた日本の版画、すなわち浮世絵を初期のル・アーヴル時代、もしくはオランダのザーンダムに滞在中(したがって1871年)に発見したことが作家オクターヴ・ミルボー(1848−1917)によって伝えられている。(以下、割愛)

この展示室は撮影不可。私はブログ記事を優先し、サッと通り過ぎました。歌川広重、葛飾北斎の見応えある作品が揃っています。時間をかけて、名品をご堪能ください。

No.66 歌川広重《亀山 雪晴》(1833年頃)他5点の広重作品の展示は2月20日まで。

No.65 歌川広重《亀山 雪晴》(1833−34年)他1点の広重作品の展示は2月21日〜3月13日。

3月14日以降も、別の作品が順次登場します。

Section8 連作―反復―屋内風景

(前略) 反復によってこそ「効果」が表現できるという考えが生まれ、そしてこの新たなプロセスを指し示すものとして「連作」という語が使われ始めるのは、1880年代後半のことである。1886年、モネはベリール島からこう記している―「つくづく思うのですが、真に海を描くためには、同じ場所で、毎日、毎時刻海を見つめて、その場所の命を知ろうとしなくてはなりません。ですから、同じモティーフを4回、いや6回も繰り返しています」(アリス・オシュデに宛てたクロード・モネの手紙) (以下、割愛)

No.85 クロード・モネ 霧のテムズ川 1901年 パステル・紙 石橋財団アーティゾン美術館

クロード・モネ 《霧のテムズ川》 1901年 パステル・紙  石橋財団アーティゾン美術館

120年後、汚染が報道されるような川になってしまうとは…。テムズ川の川幅は大きいようですが、川と空の境界線は画面の真ん中辺りでしょうか。青緑色の濃淡で仕上げられた神秘的なパステル画です。

(前略) 1892年、次いで1893年、モネはゴシック大聖堂を描くためルーアンに数週間滞在する。この2回の滞在で、30作ほどの「大聖堂」連作が描かれ、1894年にアトリエで仕上げられた(No.82,No.83)。モネが建築物にこれほど徹底してこだわったのは初めてのことだ。(中略)曇天や晴天、夕方や朝により、変化する光に対応した色彩の変容をモネは描き出した。(以下割愛)

No.82 クロード・モネ ルーアン大聖堂 扉口 朝の太陽 1893年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ 《ルーアン大聖堂 扉口 朝の太陽》 1893年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

共に『ルーアン大聖堂 扉口』をモティーフにしたNo.82、No.83を掲載してみました。朝の時間帯(No.82)では、もやがかかったかのように全体の輪郭が朧げ。昼の時間帯(No.83)を迎えると、眩しいほどの日差しが大聖堂の壁面に満遍なく注いでいます。

No.83 クロード・モネ ルーアン大聖堂 扉口とサン=ロマン塔 陽光 1893年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ《ルーアン大聖堂 扉口とサン=ロマン塔 陽光》 1893年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

(前略) かくして1899年、1900年、1901年、モネはかつて1870年から1871年にかけて滞在し、たいそう気に入っていたロンドンに赴き、制作を行った。とりわけ国会議事堂がモティーフに選ばれている。モネはあの有名なロンドンの霧を好ましく思っていた。その霧のおかげで、神秘に満ちたもやの中に溶け込む建物群を描くことができたのである(以下、割愛)

No.88 クロード・モネ ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光 1904年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ《ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光》  1904年 油彩・カンヴァス オルセー美術館
《ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光》 部分

息を呑む美しさ…。本展の筆頭に推したいです。

No.84 クロード・モネ ヴェトゥイユ、日暮れ1900年頃 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ《ヴェトゥイユ、日暮れ》1900年頃 油彩・カンヴァス オルセー美術館

画面下半分は、建物群の水面への反映。淡い色調が、幻想的な雰囲気を創り出しています。

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感想(23件)

エスカレーターで5階へ移動します。

5階踊り場
5階展示室入口

Section9 写真室2:効果と反射

クロード・モネは写真の誕生とまさに同じ時代を生きたが、この新しい芸術との関係はあまり知られていない。しかし、この画家の風景画と、1880年代から1900年代にかけての写真作品は、水や反射などといった題材、そしてモティーフを遠くに配置する表現手法などの共通点を持ち、互いに強く共鳴している。(以下割愛)

No.95 アシール・キネ 池の端ハリエニシダ 1873年 鶏卵紙 オルセー美術館

アシール・キネ 《池の端のハリエニシダ》 1873年 鶏卵紙 オルセー美術館

水面への草の反映に着目すると、まさしくモネの追究した観点でもあります。

Section10 写真室3:ジヴェルニーの庭のクロード・モネ

詳細を極めた解説につき、引用は割愛します。

No.100 クロード・モネ ジヴェルニーのモネの庭 1900年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ《ジヴェルニーのモネの庭》 1900年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

60歳頃の作品。ネット検索すると、紫色の花はアヤメのようです。これだけ咲き揃うと壮観ですよね。

展示風景

Section11 池の中の世界―睡蓮

(前略) 1883年4月、この年モネは最終的にジヴェルニーに腰を落ち着けた。1893年2月には、水生植物のある「水の庭」を設ける目的で、敷地の南にある土地を購入。この庭がやがて画家自身の言う「描くべきモティーフ」を与えてくれることになる。(以下、割愛)

No.111 クロード・モネ ノルウェー型の舟で 1887年頃 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ 《ノルウェー型の舟で》 1887年頃 油彩・カンヴァス オルセー美術館

2024年秋、国立西洋美術館で拝見した《舟遊び》を思い起こしました。モネ作品の他、あまり見掛けないモティーフなので、取り上げてみました。展示室で鑑賞すると、作品によって多少の良し悪しはあるのですが、画像で拝見すると一様に栄えるのが不思議です。鑑賞者の視点をも熟知する大御所ならでは?

No.113 クロード・モネ 睡蓮の池、緑のハーモニー 1899年 油彩・カンヴァス オルセー美術館

クロード・モネ《睡蓮の池、緑のハーモニー》1899年 油彩・カンヴァス オルセー美術館
クロード・モネ《睡蓮の池、緑のハーモニー》部分

『緑のハーモニー』とタイトルにある通り、遠目には深緑色ですが、間近で拝見すると、紫・ピンク・茶といった色も施されています。本作の大判絵葉書を気に入り、以前、机の上に飾っていたことがあります。モネが白内障を患う以前に制作された作品は、穏やかな気持ちで鑑賞することができます。

(前略) 1900年以降、ロンドンやヴェネツィアでの連作や幾点かの独立した静物画をのぞくと、この水の庭と庭の水生植物がモネのもっぱらのテーマとなった。1900年から1926年の間に描かれた450点のうちのおよそ300点、すなわち画家晩年期の作品の4分の3にあたる作品である。

No.125 クロード・モネ 睡 蓮 1903年 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館

クロード・モネ 《睡 蓮》 1903年 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館

モネの睡蓮は、2024年秋、国立西洋美術館で開催された《モネ 睡蓮の時》で沢山拝見しました。葉の描き方といい、水面の表現といい、本作はより好ましく感じられます。

No.127 クロード・モネ 睡蓮の池 1907年   油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館

クロード・モネ《睡蓮の池》 1907年 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館

この作品も実に良いですね。水面に柳の緑が映り込み、睡蓮の葉とは異なる緑色で表現されています。ピンク色・紫色に染まった空の反映もまた美しい。

(前略) 睡蓮は、「溜まっている(眠っている)水」や水辺の世界と同様に、アール・ヌーヴォーの主要テーマのひとつであり、エミール・ガレの最も美しいガラス作品にインスピレーションを与えている。(以下、割愛)

エミール・ガレの作品8点、ドーム兄弟の作品3点が展示されています。撮影可・不可が混在しているので、撮影時には注意しましょう。

No.116 エミール・ガレ 海藻装飾文花瓶 1899−1900年 二重ガラス オルセー美術館

エミール・ガレ《海藻装飾文花瓶》1899−1900年 二重ガラス オルセー美術館

No.118 エミール・ガレ ダリア装飾花瓶 1900−04年 三層フィリグリー・ガラス オルセー美術館

エミール・ガレ《ダリア装飾花瓶》 1900−04年 三層フィリグリー・ガラス オルセー美術館

特別映像スペース

No.139 アンジュ・レッチア モネに倣って 2020年 映像

現代作家アンジュ・レッチアがクロード・モネにオマージュを捧げる映像作品を展示する。(中略) 彼の作品は、世界中の主要な美術館に所蔵・展示されている。睡蓮の池が着想源となる《モネに倣って》は、モネ自身、彼の家、睡蓮、そして「水と反射の風景」が、自然の観察と幻想のあいだで、見る者の心に残る連なりを形づくる、没入型の魅惑的な映像作品。日本では初めての公開となる。(以下割愛)

展覧会を締めくくるに相応しい没入型体験ゾーンです。

以上、印象に残った展示作品を18点ご紹介しました。【前編】でも18点取り上げております。併せてご一読ください。

混み具合にもよりますが、観覧時間の目安は2時間強。最初の展示室『Section1』は混雑するのでサッと流し、『Section3』辺りから本腰を入れて鑑賞されると良いでしょう。

《クロードモネ風景への問いかけ》展の会期は5月24日まで。

アーティゾン美術館 Artizon Museum, Tokyo
東京駅徒歩5分、学生無料(要予約)。印象派と日本近代洋画を中心に、古代から現代アート まで約3,000点を所蔵。美術の多彩な楽しみをお届けします。

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