会期は2月19日から5月24日まで。観覧料は一般2,300円、大学生1,300円。「トワイライトカラーコーデ割引」なるものが(窓口販売のみ)採用されます。オレンジかパープルを取り入れた服装で来館すると100円引に、2色のコーディネートで来館すると200円引になるとのこと。
第2章途中から展示している一室のみ撮影できます。第2章扉の解説も撮影できないため、一部ノートに書き写しました。撮影することのできた展示作品を中心に20点ご紹介しましょう。
第1章 開化絵
撮影不可。本章は割愛致します。
第2章 小林清親
(前略) 小林清親はその変革期に生まれ、江戸から明治への移行を直接経験した。幕府の下級官吏の家に育ち、社会の混乱と急速な近代化を目の当たりにした彼は、新しい時代に絵師として適応する道を選び、近代日本の風景を記録する主要な作家となった。(以下割愛)

No.23 小林清親 版元:松木平吉 不忍池畔雨中 明治13年頃 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館
不忍池は清親とその愛好者にとって好まれる主題であった。彼はその池を描いた作品をいくつか制作している。(以下、割愛)

不忍池の150年前の実景。柳の緑色が爽やか。裾をたくし上げて往来を行く親子の姿に、当時の暮らしぶりが垣間見えます。
No.24 小林清親 版元:福田熊次郎 大川岸一之橋遠景 明治13年 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館
一之橋は、両国橋下流の隅田川東岸に流れ込む堅川に架かる橋で、画面では対岸に小さく影に潜んでいる。満月に照らされ、あらゆるものが逆光のシルエットに沈む。一方で月明かりが雲の端をきらめかせ、水面や濡れた地面を照らし、ゆらぐ人物の影を浮かび上がらせる。川面に灯火が長く延びる。(中略) 女性を乗せた人力車が疾走する。女性の髪型は「つぶし島田」のようで、粋筋の女性らしい。(以下、割愛)

満月の照る夜空、車夫の持つ灯り、対岸の灯火。密やかな物語が始まるようなニュアンスの作品です。
No.30 小林清親 版元:福田熊次郎 日本橋夜 明治14年 錦絵 三菱一号館美術館

車道を幌馬車・人力車が行き交っています。歩道にも沢山の人の姿が見えます。灯りを提げている通行人は、日が暮れた後、外出した人たちでしょうか。文明開化を象徴するガス灯がスタイリッシュです。
No.32 小林清親 版元:福田熊次郎 明治十四年一月廿六日出火 両国大火浅草橋 明治14年 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館

清親の『東京名所図』には合計3つの火災場面が含まれており、そのうち両国地区が炎上するこの場面はおそらく最も目を引き、身の毛もよだつものである。(以下、割愛)
炎・煙に覆い尽くされた、禍々しい空の描写がリアル。この強風では、隅田川で食い止めることは難しかったことでしょう。「1月26日」と記しているだけに、類を見ない大火だったのでは…。
No.33 小林清親 版元:福田熊次郎 明治十四年二月十一日夜大火 久松町にて見る出火 明治14年頃 錦絵
不吉な巡り合わせで、清親の自宅は明治14(1881)年に火災により焼失し、近代化する東京のいくつかの有名な火災場面を不朽のものとしたシリーズは中断された。(以下、割愛)

No.32を鑑賞した後拝見すると、大火がモティーフであることは一目瞭然。本作のみ鑑賞したら、得体の知れないものが沸き起こった…という感想になるかも。本作もタイトルに「2月11日」と記されています。備忘録も兼ねたのかしら。時代が明治に変わっても尚、消火する有効な方法はなかったのでしょうか。
No.34 歌川広重 版元:魚屋栄吉 名所江戸百景 日本橋江戸ばし 安政4年 錦絵

刹那、只者ではない…と思いましたが、やはり。昨夏、山種美術館開催『江戸の人気絵師 夢の競演展』で《東海道五拾三次》《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》《近江八景》を鑑賞しました。本作は『大はしあたけの夕立』と同じシリーズですね。
No.38 小林清親 版元:小林鉄次郎 武蔵百景之内 江戸ばしより日本橋の景 明治17年 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館

モティーフは、腕に墨を入れた担ぎ売りの男。天秤棒から提げた荷(魚)も含め、画面三方を囲んだ構図が斬新。
No.36 小林清親 版元:小林鉄次郎 武蔵百景之内 両国花火 明治17年 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館

屋形船に乗った女性は、水面に映る花火を見物しているのでしょうか。髪を緩く結い、白いうなじを見せる後ろ姿に色気を感じます。
第3章 井上安治と小倉柳村
(前略) 井上安治は浅草出身で、月岡芳年と清親に学んだ。10年足らずの活動期間に制作した版画には、両者の影響が明確に見られ、芳年に倣った歴史画とともに、清親の「光線画」を受け継いだ光と影の表現が、明治の芸術的感性を特徴づけている。(中略) 一方、小倉柳村は写楽のように謎の多い版画家で、現存作はわずか1年間に集中し、生涯の詳細は不明である。清親に直接学んだかも定かではなく、性別すら不明ではあるが、作品には清親の革新的な光と闇の表現が確かに受け継がれている。
No.47 井上安治 東京真画名所図解 浅草蔵前通 明治17−22年 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館

『蔵前』について詳述しているサイトを見つけたので、リンクを貼っておきます⇓

No.46 井上安治 版元:福田熊次郎 銀座商店夜景 明治15年 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館

江戸時代は日が暮れかかる頃に商いを終えたようですが、明治時代の閉店時刻は多少延びたのでしょうか。この日最後の接客かもしれませんね。
No.44 井上安治 東京真画名所図解 鹿鳴館 明治16−22年 錦絵 スミソニアン国立アジア美術館

鹿鳴館時代は明治16年〜20年頃とのことなので、本作の制作時期は特定できていないということですね。月明かりに照らされた屋外はしんとして、刻々と夜が深まります。建物内には沢山の人影が浮かび上がっています。
No.50 井上安治 版元:福田初次郎 皇城二重橋 明治29年 錦絵、後摺

濃紺(もしくは黒)の軍服を纏った馬上の男性は、当時皇居を警備していた近衛兵ですね。
第4章 チャールズ=ウィリアム・バートレット
(前略) イングランド生まれの彼は、ロンドンのロイヤル・アカデミーとパリのアカデミー・ジュリアンで学び、水彩画家として評価を確立した。松方コレクションの形成に寄与したブラングィンと親交が深く、共にヨーロッパ各地を旅しており、浮世絵を知ったのも彼を通じてとされる。大正2(1913)年に東洋へ旅立ち、日本滞在中の大正4年に渡邊庄三郎を訪問する。旅先での水彩スケッチを見た渡邊は版画化を提案し、日本の筆を通して下絵制作を促した。(以下、割愛)
第4章以降の展示室は撮影できません。チャールズ.W.バートレット作品は好ましく、扉の解説を一部ノートに書き写しました。
No.86 チャールズ.W.バートレット 版元:渡邊庄三郎 岩淵 大正5年 本版多色摺 スミソニアン国立アジア美術館

ミュージアム・ショップでバートレットのポスト・カードを探したら、この一種類だけありました。淡い水色を基調とした、パステル画と錯覚するような作風です。
No.90 チャールズ・W・バートレット 版元:渡邊庄三郎 根岸 大正5年 本版多色摺 スミソニアン国立アジア美術館
(前略) 渡邊庄三郎(1885−1962)のもとを訪ねた彼は筆を贈られ、自ら費用を負担して制作に臨み、翌年にインドと日本の新版画を完成させた。本図はそのうちの一枚である。(以下、割愛)
縦長の構図。画面を縦に大木がほぼ貫いています。その根元の辺りを、蓑に身を包んだ担ぎ売りが通り過ぎます。その10mほど先を職人風の男、更に10mほど先をまた1人歩いて行きます。彼らの行く雪道を視線で辿ると、中景の集落へと誘われます。その仕掛けが上手いな〜と思いました。中景と枝が重ならない大木の造形も良いですね。空、海、雪の描写も見事です。
第5章 高橋松亭(弘明)
高橋 松亭(1871−1945)は、渡邊庄三郎と協働し、「新版画」へとつながる「新作版画」の成立に大きく貢献した絵師である。(中略) 明治39(1906)年、渡邊が独立して尚美堂を開き、浮世絵や複製版画を扱うとともに、外国人向けの「新作版画」の刊行を構想する。翌年、松亭に下絵を依頼した作品が初のオリジナル版画となり、予想以上の人気を得た。(以下、割愛)
No.99 高橋松亭 版元:渡邊庄三郎 都南八景之内 馬込 大正11年 木版多色摺 スミソニアン国立アジア美術館
春の景観。そぼ降る雨の描写、遠景の木立の濃淡が美しい。笠を被った男が、荷を負った牛を引いて田舎道を歩いて来る姿が描かれています。遠景にも二人連れ。構図として中景の人物はいなくても…とふと思いましたが、庶民の暮らしぶりが主題なんですよね。
No.104 高橋松亭 版元:渡邊庄三郎 伊豆稲取 大正15年 木版多色摺 三菱一号館美術館
藍色・オレンジ色で描き分けた空に魅了されました。細部まで描き込まれた船体の重厚感といい、波立つ海面の立体感といい、豊かな表現力に圧倒されました。申し分のない作品でした。
価格:45000円 |
第6章 伊東深水
伊東深水(1898−1972)は鏑木清方(1878−1972)とともに、大正・昭和期に美人画で人気を博した日本画家であり、新版画を代表する絵師でもある。(以下、割愛)
伊東画伯の絵画は、山種美術館で昨春開催された『上村松園と麗しき女性たち展』で5点拝見しました。殊に《吉野太夫》は格調高く、忘れ難い作品です。本章の版画も優品は多いのですが、割愛致します。
第7章 吉田博
撮影不可。本章も割愛致します。実はこの辺りで集中力が切れました。疲れてくると、どうでもいいや…と思う年齢になりました。
第8章 川瀬巴水
肝腎要の展示室なのに、集中力が続かず、流して鑑賞。展示室出口付近にいた監視員さんに尋ねたら、階下の残る展示は僅か。休憩時間を設け、この展示室を再度鑑賞するための体力・気力を養いました。
No.134 川瀬巴水 版元:渡邊庄三郎 東京十二題 深川上の橋 大正9年 木版多色摺 スミソニアン国立アジア美術館

独特な構図。橋は画面に収まらない一方、橋桁の海面への反映はつぶさに表現されています。
No.137 川瀬巴水 版元:渡邊庄三郎 東京十二題 木場の夕暮 大正9年 木版多色摺 スミソニアン国立アジア美術館

木場は当時、水運が盛んだったようですね。川面に映る橋・電柱の揺らぎが印象的です。本作が本展のメイン・ビジュアルであることに気が付いたのは帰宅後。
No.143 川瀬巴水 版元:渡邊庄三郎 三菱深川別邸の図 松の池畔の涼亭 大正9年 木版多色摺 スミソニアン国立アジア美術館
三菱深川別邸は、現在の『清澄庭園』なのですね。本作こそ本展の推し筆頭に挙げたいです。残念ながらポストカードはない模様。横長画面を活かし、右側が近景、真ん中が中景、左側が遠景に割り当てられています。近景に描かれた松の構図が見事です。幹を画面外側へ向ける代わりに、画面内側に枝を差し伸べる加減が絶妙。遠景に描かれた涼亭には、大泉水を眺める女性の姿を認めることができます。
No.144 川瀬巴水 版元:渡邊庄三郎 三菱深川別邸の図 春雨の小舟 大正9年 木版多色摺 スミソニアン国立アジア美術館

No.143の代わりに、本作ポスト・カードを購入しました。展示室では風情ある春雨の表現にご注目ください。彫師も凄腕です。
章立てについては展示室の表示に従いました。ダウンロードした出品リスト(画像)には【第4章 写真】【第5章 チャールズ・ウィリアム・バートレット】と掲載されています。展示室では【写真】の章立てはなく、【第4章 チャールズ=ウィリアム・バートレット】と表記され、第5章以降も若い番号へずれているようです。三菱一号館美術館へ後日照会しましたが、オペレーターが応対するシステムのため、何れを優先すべきか確認できておりません。
以上、展示作品20点をご紹介しました。混み具合にもよりますが、観覧時間の目安は2時間半です。《トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで》展の会期は5月24日まで。

