美術館へのアクセス等、概要は【前編】に記載しました。以下、茶色の文字で表記している箇所は、会場内の解説から一部引用しました。
アート・ラウンジ
令和8年度のリニューアルでは、図書室を改装してアート・ラウンジが新設されました。本館・北庭・佐藤忠良記念館を結ぶ地点に位置するこの空間は、来館者が美術に関わる本や情報に触れながら憩い、交流する新たなセンターです。(以下、割愛)



実に贅沢な空間です。日常を離れ、美術の専門書に触れる体験は、人生を豊かにしてくれそう…。
1階(展示室3・展示室4)、地階(展示室5・展示室6)の展示作品から、印象に残った作品をご紹介しましょう。
展示室3〜展示室4
池田龍雄―1950年代のペン画 1950年代当初、朝鮮戦争勃発などを背景に、各地で平和・反戦運動が起こっていました。少年時代を戦争に翻弄された池田龍雄もまた、若い作家たちとともに基地反対闘争の現場に入ります。 (中略) 1950年代半ばには、池田の関心は社会問題から人間一般へと移り、人間の暗部や社会の不条理を奇怪な化物や獣に託した〈化物の系譜〉〈禽獣記〉シリーズなどを展開させました。
✢池田龍雄 椅 子 1955 紙、インク・コンテ・水彩 風刺シリーズ

服を着たキリギリスのような生命体が、身の丈に合わない、みすぼらしいソファに腰掛けています。何を風刺しているのでしょうか。
✢池田龍雄 ボス鳥 1957 紙、インク・コンテ 禽獣記シリーズ

先の《椅子》以上にインパクトのある作品です。巨大な鼻、瞳孔が収縮した目、小さな耳、小さく組まれた両手。鳥人がもしも存在したなら、こんな風貌かしら。

✢難波田龍起 黒と赤 1959 麻布、油彩

前衛芸術は、昔も今もよく分からないのですが、何となくいいなあ…と思って撮影しました。

✢針生鎮郎 極楽・鳥 1958 麻布、油彩

何故か、クリムト《生命の樹》を連想しました。10羽を超える鳥が描き込まれています。様々な表情を見せる目が特徴的。
✢志賀 広 作品A 1964 麻布、油彩

この配色、東京都美術館で2025年3月に鑑賞した《ミロ展》を彷彿させます。
✢宮城輝夫 月の番人 1963 麻布、油彩他

モティーフ数・色数からすると散漫になりそうに思いますが、実際は纏まりのある、完成度の高い作品です。
✢斎藤義重 作品 (白) 1963 合板、油彩

本作も私の理解を超えます。乱雑な線の集合体が芸術になってしまう不思議…。
宇佐美圭司の人型 1963(昭和38)年に画家としてデビューした宇佐美圭司は、翌年、それまでの抽象表現に行き詰まりを感じ、自らの身体をかたどった人型を初めて画面に登場させます。(中略) 人型には頭部がなく、個性や社会的背景によらない普遍的な記号として扱われています。 (以下、別に引用)
✢宇佐美圭司 交換 No.1 1968 麻布、油彩
各人型に青、黄、赤、緑の色が与えられ、4つを重ね合わせたときに輪郭線が交差してできる形が図示されています。

経糸と緯糸を織るように仕立てられた、随所に緻密さを感じる作品です。
✢松谷武判 作品 66−2 1966 合板、画布、ビニール接着剤・アクリル・油彩

60年前に制作されたとは信じ難いほど、現代的な雰囲気を纏っています。
菅野聖子「具体」の新しい傾向 仙台出身の菅野聖子は、25歳のとき結婚を機に関西に移住します。学生時代から絵画制作を続けていた菅野は、1964(昭和39)年、具体美術協会を率いる吉原治良に助言を求め、同会の活動に加わりました。(中略) 菅野は「具体」での展示や批評の機会を得て自身のスタイルを模索し、1967年頃からは規則的な線による絵画を制作します。製図用具の烏口※を用いて一本一本丁寧に引かれた線は、画面上に集積したとき、リズムと躍動を生み出しています。
※「烏口」について詳述しているサイトのリンクを貼っておきます⇓
✢菅野 聖子 アルファからオメガまで I 1970 綿布、アクリル

端正で美しい作品。夥しい時間を制作に費やしたことでしょう。恵まれた才能と共に、忍耐強さを持ち合わせた女性だったのでしょうね。
✢林 範親 5:45 PM (屋外公衆電話室) 1982 木

モティーフが電話室だから時刻をタイトルに選んだのか、はたまた《5:45 PM》に発生した何かの現象を取り上げたのか。ボックス内に持ち込んだ傘まで制作されたのですね。
抽象表現を離れて 佐々木正芳は、仙台を拠点として活躍した画家です。1968(昭和43)年から、それまでの油彩による抽象的表現をやめ、エアブラシを用いて人間の姿を描くようになりました。(中略) 佐々木の描く人間たちは、後ろ姿のことが多く、髪がないため、皆同じように見えます。1980年代には、布のようなものに顔や身体を覆われた人間も登場しました。均質化され、匿名性を帯びた不気味な人間の姿は、観るものを不安な気持ちにさせます。
✢佐々木正芳 ぬぎたい Ⅱ 1980 麻布、アクリル

かなぐり捨てたいのは、時代の閉塞感でしょうか。それとも、三者三様に抱えている事情でしょうか。身につまされる思いに囚われます。

須田寿と立軌会 戦前から官展に出品した須田寿は、1949(昭和24)年に日展を離れ、牛島憲之らと立軌会を結成しました。(中略) 須田は初期の穏健な作風からキュビスムを取り入れた試行錯誤を経て、1954年の初渡欧を契機に、悠久の時間の流れを描き出す独自の画風を形成しました。 (以下、別に引用)
✢須田 寿 廃屋の道 1999 麻布、油彩 新収蔵作品
93歳となる年の作ながら、繊細に塗り重ねられたマチエールにより、内省的とも東洋的とも言える精神の働きを現出させた画面は緩みを感じさせません。

円熟期の画家による作品かと思いきや、93歳時に制作された作品とは!! 高い精神性を感じます。購入を決めた学芸員さんを褒めたい。
版画の1970年代 第6回東京国際版画ビエンナーレ(1968年)では、印刷によるデザインと版画である作品との境界が話題になります。(中略) パフォーマンス、コンセプト・アートなど、さまざまな表現方法が試みられていく中で、版画は重要な表現手段の一つとなっていきました。
✢百瀬 寿 “ Square-Type Ⅱ:Green to Pink ” 1978 紙、セリグラフ

大作です。鮮やかな色に惹かれ撮影しましたが、どう角度を変えても、他の展示作品が映り込んでしまいます。是非、会場でご覧になってください。
✢加納 光於 稲妻捕り 1977 紙、多色石版

稲妻を擬人化しているのでしょうか。このタイトルと本作とを結び付けることのできる鑑賞者は先ずいないでしょう。
展示室を退出。地階の展示室へ行ってみましょう。
地階へ向かう螺旋階段
生まれ変わった天井材 令和8年度のリニューアル以前の展示室の天井には、白い格子状の照明ルーバーが設置されていました。リニューアルで新設された、地階へ向かう螺旋階段の頭頂部の照明器具は、このルーバーのアルミニウム材を再利用して製作されたものです。(以下、割愛)


見える収蔵庫
階段を下りると、正面に収蔵庫があります。
新たな鑑賞体験 展示室5、展示室6、見える収蔵庫は、令和8年度のリニューアルにより新設されました。 (中略、別に引用) 見える収蔵庫は、収蔵庫で大型の絵画作品が保管される様子を見ることのできる施設です。絵画を固定するスライド式ラックのほか、壁・床・天井の素材も含めて実際の収蔵庫と同じ機構で作られており、美術品を確実に次の時代に伝えるために、美術館で行われている保存管理の取り組みを体感することができます。


展示室5
展示室5では、主に当館の絵本原画コレクションを展示します。展示用の額装ではなく、収蔵庫で保管される状態に近い形で展示できる引き出し型のケースにより、自分の手で引き出しを開いて作品と出会うことができます。
引き出し型のケースが2台並んでいます。茶色のハンドルを握り、静かに引き出してみましょう。
✢中谷 千代子 ブレーメンのおんがくたい 1967刊(偕成社) 紙、コンテ・ホワイト 新収蔵作品


✢中谷 千代子 ぼくはぞうのはなきち 1989.4刊 (福音館書店) キャンバスボード、油彩・インク 新収蔵作品

展示室6
戦後の日本画壇と横の会・荘司福 (前略) 伊藤彬、畠中光享、平松礼二ら東西の若手画家が集い、1984(昭和59)年に結成された「横の会」は、所属団体や師弟といった縦のつながりを越え、横の連携による自由な場で新しい日本画の創出を目指す試みでした。(以下、別に引用)
✢荘司 福 風化の柵 1974 紙本着色、額装
戦中に河北展から画家として歩み始めた荘司福は、戦後に開催された海外美術展を見て理知的な構成を学びました。また東北の地から精神的なテーマを得て、日本美術院展を主な舞台に画作を深めていきました。

大作です。このテーマも難しすぎて、私の理解の及ぶところではありません。
✢平松 礼二 路 ― 冬帰路 1979 紙本着色

平松画伯の作品は、展覧会でたまに拝見します。いつだったか、都内百貨店の画廊で、画商と話す平松画伯と思しき男性をお見かけしました。

✢小野 皓一 メレンコリア ? Ⅰ を巡る随想:デューラーのコンパスによる世界の分節化 2005 木、布、顔料

大作。難解なタイトルです。タイトル中の「?」は S を連ねた記号。スマホの候補に見当たらず、記号の意味も分からず、やむなく「?」表記しました。
✢建畠 覚造 SPIRAL-4 1989 合板、木、ウレタン塗装

面白い造形に見入りました。感想を長々と綴るのが私の常ですが、前衛芸術を鑑賞する機会は少なく、本展では短いコメントを寄せることしかできませんでした (^_^;)

ミュージアム・ショップ

スペースはそこまで広くありませんが、品揃いは豊富です。モスグリーンのマグカップを気に入り、購入したい欲求に駆られましたが、インテリア・ショップで前日買物したばかり。自重しました。
並びにレストランがあります。都内の美術館に併設されたレストランと比較すると、まあまあ手頃な価格。混んでいたので利用しませんでしたが、次回は、早めか遅めのランチに利用したいです。
受付で貰った『館内案内図』を帰宅後に参照したら、1階のアート・ラウンジの奥に、【展示室3】よりやや広い【佐藤忠良記念館】(展示室C1〜C5)がありました。『館内案内図』は来館時にちゃんと見ないといけませんね (^_^;)
《美術の時代》会期は6月20日から8月23日まで。(前期は7月12日まで、後期は7月15日から。)

