ユノメ家具/本店4階に【仙臺簞笥歴史工芸館】が同居していることを知って訪問しました。開店時刻(11時)まで5分ほど待ちました。

自動ドアを抜けたところで、スタッフさんが出迎えてくれました。スリッパに履き替えるスタイル。素足の来客用に、真新しい靴下が用意されています。ストッキングだったのでお借りしました。
右側の陳列棚に、沢山の小物が並んでいます。


先ずは4階へ向かうことにします。奥のエレベーターまでご案内いただきました。
エレベーターを降りた左手に【仙臺簞笥歴史工芸館】がありました。

✧ニ、八尺ローチェスト 拭き漆塗※・鋳造

エレベーター横のローチェストからご紹介しましょう。この展示品は購入することができます。価格は297,000円(税込)。飾り金具が素敵。内側の材料は桐、とのことなので、和服など保管するのに相応しい箪笥ですよね。
※『拭き漆塗』について、解説が掲示されていました。
拭き漆塗 拭き漆(摺り漆)は、生漆(漆樹より採取した樹液)のごみを除き、生漆を“いたやもみぢ”の木で造った特殊なヘラで丁寧に塗り、拭き取ってムロ(漆は、湿気が多くなければ乾かない特性を持つため 専用乾燥室が必要)に入れ乾かします。この工程を6回から8回繰り返して仕上げます。
この光沢を生むため、途方もない手間と時間がかかっているのですね。
並びに、若い女性向けと思われる簞笥が展示されていました。ピンク色に、銀色の把手が映えますが、《仙臺簞笥》の範疇を超えるのでは…と驚かされました。その手前に展示されている手許小箪笥をご紹介しましょう。
✧手許小箪笥 木地:欅突板、金具:鋳造金具(ボタン)、塗り:木地呂塗 サイズは幅:30.0cm、奥行30.0cm、高さ42.0cm
大きな木目が特徴的です。価格は228,000円(税込)。

リビングに置く品を探す目的もあって来店したので、ざっと全体を見学した後、一階まで下り、尋ねてみました。スタッフ(黒田さん)と一緒に4階へ上がり、展示品を前に説明を一通り受けることができました。この商品だったか、記憶が曖昧なのですが、黒田さんが一番下の引出しを抜き、横長の小箱を奥から取り出しました。引き出しを簞笥本体と並べて寸法を比較しないことには分からない仕掛け。もともと防犯上作られた『隠し』細工、とのこと。指輪等、小さな宝飾品を幾つか保管する位のスペースはあります。
床が一段上がったコーナーに展示された、これら小物も購入することができます。

壁面に掲示されている解説から一部引用しましょう。
仙台簞笥 (前略) 江戸時代後期には、仙台領内で藩主や領主の産業奨励策によって簞笥が作られていた。明治時代になると、仙台は多くの職人が集まり本格的な箪笥の産地となっていった。(中略) 材料は、抽斗 前板に欅または栗、他は杉が用いられる。抽斗前面を美しい木地蠟塗りで仕上げ、棚口などの縁を黒塗りにしてコントラストをつけている。さらに、竜・唐獅子・牡丹などの様々な文様の金具で装飾される。(以下、割愛)
湯目林平と仙台簞笥 (前略) この仙台簞笥の改善と普及に一生を捧げた男がいる。湯目家具百貨店の初代 湯目林平が、その人である。嘉永3年生まれの林平は、若いころ中新田で指物大工の修業をし、明治初頭仙台で湯目家具店を創業した。当時の仙台では、一部の金持ちを除いて、塗りも金具も粗末な簞笥しか持てなかった。そうした中で彼は、仙台の風土と民衆の生活に合致した簞笥を作り出すとともに、多くの弟子を養成した。また、仙台簞笥業界の発展を目的とした仙台指物業組合を明治40年に結成し、その初代組合長を務めた。(以下、割愛)
創業者は指物大工としての技術に留まらず、優れた先見性・互助精神をお持ちだったのですね。
その並びに脚付き箪笥(3段)が展示されています。こちらの錺金具は凝っていますね。

✧鏡台 昭和20〜30年代 材質は表:欅、側:欅、抽斗:杉 サイズは幅:79.2cm、奥行32.5cm、高さ147.2cm

展示されていた鏡台は一点。こうした姿見は昨今見かけなくなりましたね。
右側の壁際には、より重厚な家具が展示されています。非売品。

昨今のインテリアはマットな質感が主流ですが、仙台簞笥は、漆を塗り重ねた光沢が特徴的です。

円形の金具に彫られているのは、厚い雲の中から出現した竜ですね。便宜上「彫られている」と表現しましたが、実際は打ち出されているようです。
✧脚付き舟箪笥※ 木地呂漆塗り・手打金具 サイズは幅43.0cm、奥行34.0cm、高さ48.0cm

両側に把手が付いています。竜をデザインした錺金具が前面を飾ります。この竜は迫力がありますね。黒田さんが扉を開けると、引出しが現れました。舟箪笥は水に浮くため、たとえ水難事故に遭ったとしても、中の貴重品は守られる、とのこと。後日、別の方から聞いた話では、水を含むと引出しに使われている桐材が膨張し、引出しを開けることができなくなって浸水を免れる、ということらしい。価格は納得の2,178,000円(税込)。
※ 船箪笥について詳述しているサイトのリンクを貼っておきます⇓


✧車箪笥※ 天保13年(1842年) 材質は、表:欅曳板、側:杉、抽斗:杉蠟組 サイズは、幅:90.8cm、奥行59.3cm、高さ:103.5cm
この箪笥の背面に下記の墨書き(製造年、製作者)が残されていた、とのこと。
天保十三年壬寅八月吉日 信武代 工人 八重樫 利蔵

※『車箪笥』について解説しているサイトを見つけたので、リンクを貼っておきます⇓

展示されている中で最も古い箪笥、とのこと。『車箪笥』が造られた理由も造られなくなった理由も共に「大火」。大火が多かったため普及したものの、人命を優先するため製造が禁止された、という経緯があるのですね。かつて商家で使用されていたものでしょうか。
✧武士型箪笥 (野郎箪笥※) 江戸末期〜明治初期 材質は表:欅抽板、側:杉、抽斗:杉 サイズは、幅:144.7cm、奥行69.2cm、高さ:105.1cm

※《野郎箪笥》と呼ばれた所以を解説したサイトのリンクを貼っておきます⇓
上段に刀を納めたようですね。全体的に劣化していますが、それが逆に良い風合いを醸し出しています。
✧武士型箪笥 (野郎箪笥) 明治初期 材質は表:欅曳板、側:杉、抽斗:杉 サイズは幅:121.9cm、高さ:91.5cm、奥行:45.7cm

上段に施された金具は、一体何を象ったのか。一見、羽を広げた鳥のようにも見えます。
✧抽斗型箪笥 大正末期〜昭和初期 材質は表:欅曳板、側:杉、抽斗:杉 サイズは幅121.2cm、高さ96.2cm、奥行44.9cm

明治初期に造られた先の簞笥と比較すると、材質は共に欅曳板ながら、こちらの木目は綺麗な状態で残っています。
戴いたパンフ『仙台箪笥の世界』によると、製作にたずさわる職人は『指物』『塗り』『金具』。その一角『金具』を担う職人の一人、八重樫榮吉氏について、黒田さんが言及されました。
✧仙台箪笥錺金具 八重樫榮吉 作
四代にわたり、途絶えることなく仙台箪笥の金具を製造してきた職人の錺金具です。一棹の箪笥に200種類以上の鏨を用いる。平成27年には『現代の名工』を受賞しました。

伊達家の家紋の一つ《竹に雀紋》を象った錺金具。一見しただけでは気が付きませんが、『栄』の一字が彫り込まれています。黒田さんのお話では、この銘の刻まれた金具を施した箪笥は、価格も一段高くなるとのこと。

黒田さんのお話では、年代物の錺金具を活かし、後から箪笥を誂えるケースもあるそうです。展示品の中に、その工程で造られた箪笥もあり、私の記憶に間違いがなければ、この箪笥⇓もそうだったかと。

金具の図柄は縁起物でしょうか。その図柄が全て異なります。元の注文主の意向だったのか、職人のこだわりだったのか、知りたいところです。
―余談― 1階の棚に陳列されていた《フレグランスランプ》(アシュレイ&バーウッド製/ロンドン)ラインナップから、小振りのランプを一つ衝動買いしました。どれも1点ものとのことで、展示品を専用箱に入れて販売する形。価格は約6,000円。本来は、専用オイルを注ぎ、2分間点火することで触媒燃焼を促し、香りを楽しむそうです。私は置物として、洗面所に飾りました。


